歯科関連検討会を相次ぎ開催/厚生労働省

歯科関連検討会を相次ぎ開催/厚生労働省

本年3月、厚生労働省の歯科関連の各種検討機関が活発な動きを呈した。

年度末ということもあり、たとえば「歯科診療情報の標準化に関する検討会」ではワーキング・グループレベルではあるものの、歯科医療の専門性について初めて議論し、今後の行方が注目されるほか、「歯科医国家試験制度改善検討会」では報告書を取りまとめ発表している。

ここでは、最近の歯科関連検討会などの進捗状況をかいつまんで紹介したい。

◆歯科医師国試験改善検討会が報告書/多数回受験者の問題は結論避け別途検討へ

医道審議会歯科医師分科会の中に設置されていた「歯科医国家試験制度改善検討会」(部会長:田上順次・東京医科歯科大学副学長、部会長代理:矢谷博文・大阪大学歯学部大学院教授)が3月29日、厚労省内で開催され、これまでの議論を集約する形で報告書をとりまとめ、発表した。その中では、現行の歯科医師国家試験をめぐり、①出題内容:出題基準、出題内容、②出願方法等:出題数・出題構成、出題形式、③合格基準:必修問題、一般問題と臨床実習問題、禁忌選択肢数、必要最低点、④公募問題―などに触れている。

特に注意が必要なのは、①の「出題基準」と③の「合格基準」。

このうち、まず出題基準をみると、「将来を見据え、社会情勢の変化に合わせて、“高齢化等による疾病構造の変化に伴う歯科診療の変化に関する内容」が重要であると指摘し、さらに「地域包括ケアシステムの推進や多職種連携等に関する内容」における歯科が占める重要性に言及。口腔機能の維持向上や摂食機能障害への歯科診療、さらに、医療安全やショック時の対応、職業倫理などに関する内容充実を図ることが必要と訴えている。次に、出題内容については、「歯科医師臨床研修において、指導歯科医の下で、診療に従事するのに必要な知識及び技術を問う水準とすべき」と指摘している。

さらに合格基準に関しては、①必修問題の得点、②一般問題及び臨床実地問題の出題領域に応じた領域別の得点、③禁忌選択肢数及び必要最低点―の各視点から言及している。一般問題と臨床実地問題に関しては、問題難易度による合格状況の変動を防ぎ、一定の地域や技能を持つ受験者が基準を満たせるよう「平均点と標準偏差値を用いた相対基準で評価を行っている」としている。

一方、禁忌選択肢数に関しては、「禁忌肢を含む問題は出題を行わない」とした上で、安心・安全な歯科医療を提供する上で必要な知識は、今後も内容充実を図り出題を継続する考え方を示している。

他方、多数回受験者への対応については、一定数の多数回受験者の存在を重くみて、これは「緊急性を要する課題である」との認識を示したうえで、引き続き厚生労働科学研究などを活用して別途、検討することとし、早急な結論を控え、課題として先送りとした。

◆歯科診療情報の標準化に関する検討会がワーキンググループを開催

次に、「歯科診療情報の標準化に関する検討会」(座長:住友雅人日本歯科医学会会長)が3月23日に同省内で開催され、「歯科診療情報の標準化に関するデータセット(案)」について議論・検討を加えている。2015年度モデル事業の報告では、新潟県歯科医師会におけるモデル事業が報告され、厚労省、新潟県歯科医師会事務局の瀬賀吉機氏と厚労省関係者の説明、報告が行われた。

その中で厚労省からは、これまでの実証事業の経緯と展望、これまで行ってきたモデル事業を説明。さらに、2016年度モデル事業として、①標準データセットに基づくレセコンプログラムの標準仕様書の策定、②ベンダー各社に標準仕様書を周知し、それをもとにレセコン用プログラムの開発推奨を図る、③レセプトデータの保存方法検討―などを実施し、データの利活用についても全国的に展開したいことを説明した。

論点整理も行っており、①レセコンに搭載するデータセット、②データの保存方法、③レセプトデータ以外のデータ保存、④複数の医療機関を受診する患者の扱い、⑤自由診療の扱いを提示―などを提起。引き続き今後も議論を重ねていくこととした。

一方、瀬賀氏も新潟県歯のモデル事業の進捗状況を説明し、①歯科情報の保存、②診療所以外のメリット、デメリットを明示するなどした。

◆歯科医療の専門性ワーキンググループを開催

また、3月24日には歯科医師の資質向上等に関する検討会内の「歯科医療の専門性ワーキンググループ」(座長:西原達次・九州歯科大学学長)が同省内で開催され、歯科医療の専門性をめぐり議論・検討を行った。

事務局からは、「医師における総合診療医に相当する歯科医師」についての資料をもとに、説明が加えられ、議論を行った。

その中では、歯科医師のイメージに関して、①地域包括ケアの中で活躍できる、②ハイリスク型患者に対応できる、③医療安全、倫理、感染対策を徹底している、④かかりつけ歯科医―など、さまざまになっていることが指摘された。

今後は、歯科は医科とは違う要素が含まれていることを踏まえたうえで、専門性や臨床研修などを議論する必要性が認識された。