きき酒 いい酒 いい酒肴No.28『新年を彩るオペレッタ、ワルツ、シャンパン』(機関紙2018年月1日1日号/No.574号)

きき酒 いい酒 いい酒肴No.28『新年を彩るオペレッタ、ワルツ、シャンパン』(機関紙2018年月1日1日号/No.574号)

新しい年の始まりです。何かと気ぜわしいですが、明るい気持ちにさせてくれる音楽やオペラはいかがでしょうか。オペラの中でも、年末年始によく上演されるのがワルツ王ヨハン・シュトラウス世によるオペレッタの最高傑作「こうもり」です。オペレッタはセリフも柔軟でアドリブもあり、それがオペラ専門とオペレッタも歌う歌手が異なるゆえんともなっています。

「こうもり」は、当時のオーストリアの典型的な富裕階級の生活を描いているのですが、オペレッタの創始者ともいえるジャック・オッフェンバックの影響もあり、それまでの喜劇スタイルのオペラの要素を含みながら、粋なウィンナ・ワルツやお洒落なポルカであふれています。

オペラに比べてオペレッタは娯楽性の要素が強いのですが、「こうもり」は失いがちな気品を伴ったオペレッタの最高傑作です。ウィーンの芳香にあふれ、シュトラウスの個性に満ちた音楽性豊かな大傑作となり、オペレッタの王様ともいわれています。

その中でも、いつ聞いても楽しくなるシャンパンの歌という曲があります。

葡萄酒の火の中に 楽しい生活が燃え立つ

王様や皇帝は名誉を愛するが 何より葡萄の甘い精を愛する

乾杯! 声を合わせて酒の王を讃えよう

乾杯 乾杯!

王者の地位は皆の認めるところ

シャンパンは酒の王と呼ばれる

王者シャンパン 万歳!

すべての国が讃える 遠い所の人も讃える

シャンパンは苦しみを洗い流す!

賢い領主は酒を絶やさない!

登場人物の間で悲喜こもごも、さまざまな事件が起こるのですが、最後はすべてシャンパンのせい、シャンパンの泡のように忘れようという結末になっています。

シャンパンというのは、フランスのシャンパーニュ地方で作られた発泡性のワインのことをいい、他の地方で作っている発泡性のワインのことをクレマンといいます。しかし、元々シャンパンの原型といわれる飲料は、フランスの南西(ラングドッグ&ルーション地方で、カルッカソンヌに近い)リムー(Limoux)という町から始まったのです。太平洋と地中海の二つの海の影響を受け、日照に恵まれて雨も比較的多く降ります。世界最古のスパークリングワインの産地として、ワイン史においてとても有名です。昨年、リムーのワイナリーに行きましたが、そこの資料館に「1531年には修道士がモーザックという品種からスパークリングワインを作っていた」という記録が残っていました。

それぞれの農家が持ち寄ったワインを集めて、再発酵させて発泡ワインを作ったのが始まりです。

お正月恒例のウィーンのニューイヤーコンサートも、日本にいながらテレビで楽しめます。毎年、これを聞かないと一年が始まった気がしない方も多いことでしょう。ニューイヤーコンサートの最後は「美しき青きドナウ」と「ラデッキー行進曲」がお決まりです。会場一同の拍手に合わせ、テレビを見ながら一緒に拍手して新年を迎えるのも楽しいです。美味しいシャンパンやクレマンを開けて、これからの歯科医療界が明るくなることを願っていきたいです。

(協会理事/早坂美都)