きき酒 いい酒 いい酒肴 No.35『春を告げる❝いちご❞』(機関紙2019年3月1日号/No.588号)

きき酒 いい酒 いい酒肴 No.35『春を告げる❝いちご』(機関紙2019年3月1日号/No.588号)

少しずつ気温が高い日が増えてきました。3月の旬の食材で人気なのは、「いちご」だそうです。クリスマスに多く見られますが、本来の旬は春なので、赤く色づいた美味しいいちごが出回る季節でもあります。

この季節はいちご狩りに出かける方もいらっしゃるでしょう。小さなお子さんだけではなく、大人も楽しい行事です。また、ホテルやレストランでいちごビュッフェと称して、いちごを使った料理やスイーツが並ぶイベントも、見るだけでも心浮き立つ気持ちになります。

いちごは、バラ科の植物で林檎や梨と同じ科目に属する多年草です。栄養素としては、ビタミンC、カリウム、マグネシウム、葉酸など含まれています。苗を購入し、家庭菜園やプランターでも割と気軽に作ることができるので、病気や害虫に注意すれば、可憐な白い花を眺め、少し酸っぱい実を味わうことができます。

スイーツに使われることが多いですが、ホワイトリカーやウィスキーに漬け込むことによって、香り高いいちご酒を楽しむことができます。梅酒をつくる時と同じように、熱湯消毒したガラス瓶にいちごと氷砂糖、レモン、ホワイトリカーもしくはウィスキーを入れて漬け込みます。一週間目くらいから飲めますが、できれば2カ月ほどお待ちください。梅酒は半年ほどかかりますが、いちご酒は短い期間でできあがります。漬け込んだいちごは、色が抜けて白くなっています。捨てずに砂糖と煮詰めると色が赤色に戻り、いちごジャムができます。

市販品のいちご酒もあります。1872年創業の栃木県小林酒造の「鳳凰美田」というお酒です。このお酒は、日光連山の豊富な伏流水に恵まれた美田(みた)から命名されたそうです。小林酒造では、桃、杏、柚子といったリキュールも作っています。日本酒に使用される麹がもつ酵素の働きにより、いちごの細胞膜を破砕せずに液状化しています。そこにわずかな乳製品をブレンドすることによって、いちごミルクのような味わいになっています。

また、いちごの花の酵母を使用した日本酒もあります。花酵母といって、ナデシコ、サクラ、ヒマワリなど、さまざまな花から抽出した酵母があるのです。花酵母のお酒はそれぞれの花の香りがするわけではありませんが、フルーティな味わいとなることが多いです。軽快な飲み口、甘みとコク、爽やかな酸が拡がったあと、最後にアルコール独特のわずかな苦みと米の旨味、濃醇な味わいを楽しみことができます。

いちごの花言葉には、「幸福な家庭」、「尊敬と愛情」、「先見の明」があります。赤い実をたくさんつけて根を張ることで「幸福な家庭」、キリスト教の聖ヨハネとマリアにいちごが捧げられたことにより「尊敬と愛情」、いちごの根や葉を水につけて目を冷やすと視力が回復すると信じられていたことより「先見の明」という言葉が選ばれたそうです。ちなみに、331日は「いちごの花」の日です。

この季節ならではの旬の味を、さまざまな方法で召し上がってみてください。

(協会理事/早坂美都)