映画紹介№33「Ex Machina/エクス・マキナ」 【2015年英国製作/アレックス・ガーランド監督・作品】
「私は不良品として破棄さ
れるの?」
「あなと一緒にいたいわ」
2016年、グーグルのAI「Alpha GO」がプロ棋士に圧勝。人間がAIに負け、スマホが進化し、技術への不安や恐れが私たちの心や生活に深く潜むようになってきました。
映画は人工知能や検索エンジンによるビッグデータを利用し、人間を超えた人工知能AIとそれを作り出す天才プログラマーの葛藤を、今を舞台にして描くサスペンス作品です。
13歳の時にブルーブックのプログラムを書き、グーグルやアップルのような検索エンジンの会社を創業した天才プログラマーは山岳地帯の中の研究施設に引きこもり、人間を超える知能と感覚と体を合わせ持つAIロボット「エヴァ」を秘密裏に完成させていました。
人工知能が人間と同等以上であると判定されるには誰かにチューリングテストをやってもらう必要があります。「ロボットだと分っていても、人間として感じてしまうかどうかを見極めたい…」というのが天才プログラマーの願望でした。
映画は、その任務を負う若い男性が研究所に1週間、泊まり込むところから始まります。
AIロボット「エヴァ」は機械と分かるように手足は配線や構造が丸見えのスケルトンに作られています。
若者はエヴァの美しさと人間らしいしぐさ、振る舞い、知性に驚き、その不気味さに次第に惹かれていくようになります。
「ここでエヴァを作った」
「AIが人の表情読み取り真似できるようにした」
「私は地球上の携帯電話をすべてハッキングし」
「数限りない声と表情のサンプルを集めた」
「これが彼女の脳だ」
プログラマーはいくつもの試作品を指さしながら、
「脳は電子回路を使わないでジェル状になっている」
「記憶を有効に貯蔵し、思考を形成できる」
「流動性ハードウェアだ」
「人間の思考形態は検索エンジンそのものだ」
「ソフト ウェアはブルーブックだ」
エヴァは「あなたも私と一緒にいたい?」と若者を誘惑してきます。
「僕に恋するように設定をしたのですか?」
「恋するように、設定してある」
「彼女は君が最初の男だ」
「なぜエヴァを作った?」
「人工頭脳の到来は避けられない」
「エヴァの誕生は進化だ」
「いつかAIは人間を原始人のように見なすだろう」
「やがて人間が絶滅する時が来るかもしれない」
エヴァは想像力や性的誘惑を使い、若者の恋心を利用し従順さを装い、自分を作ったプログラマーを殺害し、全身を人工皮膚で覆い、施設を脱出し、人間として街の雑踏の中に消えていきます。
人間と機械の境界線が曖昧になり、この映画を観た後は、知らぬ間に街に人間の姿を装った元AIが紛れ込んでいるかもしれないと思うようになりました。
タイトルの「エクス・マキナ」の「エクス」は元カレの「元」。「元マシン」という意味だそうです。第88回アカデミー賞で、視覚効果賞を獲得しました。
(協会理事/竹田正史)