映画紹介⑧ 「リンカーン」

映画紹介⑧ 「リンカーン」

「黒人は皆殺しにされました」
「俺たちも南軍の白人を皆殺しにした」
映画は靴で敵の顔を踏み潰し、北軍の黒人は銃剣で南軍の白人を容赦なく、南軍の白人は黒人を串刺しに。怨念に満ちた熾烈なジェンキンズ・フェリー戦場のシーンから始まります。
その時、1865年1月、大統領再選から2ヶ月たち、南北戦争は4年目を迎えていました。 南北戦争(1861~65年)は、奴隷制度を廃止し、保護貿易を進めるリンカーンの政策に反発して、奴隷制度を存続させ、自由貿易を求めて離脱した南部11州との内戦。戦況は北軍に優位。残された課題は「奴隷開放宣言」を確固たるものにする合衆国憲法修正第13条を下院で早く通過させ、戦争を終結することでした。
法案を通すには共和党内の急進派をなだめ、野党の民主党議員を取り込まねばなりません。
「修正案第13条!」
「通れば400万人の黒人が開放され」
「白人が脅かされる」
映画は法案成立までの政界裏工作を丁寧に描いて行きます。「奴隷制もしくは自発的でない隷属は、アメリカ合衆国内およびその法がおよぶいかなる場所でも、存在してはならない」これが憲法修正第13条です。
残念ですが、この映画ではスピルバーグ監督は黒人奴隷の悲惨な状況まで描きませんでした。
 リンカーンに扮するのはミュージカル映画「ナイン」などを演じたダニエル・ルイ=ルイスです。