映画紹介⑩「誤診~First do no harm」 1979年米国/ジェームズ・ブリッジス監督

映画紹介⑩「誤診~First do no harm」 1979年米国/ジェームズ・ブリッジス監督

「医療に忠実たることを誓います」
「己れの診断により、患者のために」
「何よりも患者に害をなさぬことを」
 映画は「ヒポクラテスの誓い」から始まります。
 ひとりの母親が息子を薬漬けにしてしまう医者のやり方に不安を抱き、息子を救うために駆けずり回る衝撃のメディカル・サスペンスドラマとなっています。
 舞台は、アメリカのカンザス・シティー。3人の子どもに恵まれ、幸せに暮らす平凡な普通の夫婦の末っ子の幼いロビーに突然に悲劇が訪れます。
「ロビーが学校で転んだそうよ」と電話が入ります。これがロビーの最初の軽いてんかん発作でした。
「ママ、早く来て!」
「ロビーが変だ」
 ロビーはからだが硬直して身動きしません。これが2度目の発作でした。
「突発性てんかんで…」
「突発性って?」
「原因不明ということですよ」
 CT、造影剤X線。脳波、脳腫瘍、腰椎穿刺などさまざまな検査を受けます。
「70%の子は 最初の薬で発作をほどよく抑えられます」
「まずフェノバルビタールを試してみましょう」
 薬による幻覚症状、興奮、発熱などの副作用が発生し、副作用を抑えるための更なる薬の投与となり、悪循環が重なっていきます。子どもはみるみるうちにやつれて行きます。
「今度の薬は」
「ジラチン」
「フェノバルビを減らしジラチンを増やしているの」
「ロビーは実験台みたいに薬を試されているんだ」
と同じてんかんを持つ友だちの忠告を受けます。
 後になって、夫が会社の支部に移動したため、無保険になっていることがわかりました。病院からの高額な治療費の請求で家計は火の車になってしまいます。息子のてんかん発作のために家庭が壊されていきます。
「どこかが間違っているわ。治療のはずが悪くなるばかり」
「薬を与え、その副作用を治すのにまた薬」
「その副作用にはまた別の薬」
「息子は発疹が出て、「リンパ腺が腫れ、痔になり、歯茎が腫れ」
「酔っ払いか、ゾンビみたいにフラフラだわ」
「それって病気のせいなの? 治療のせいなの?」
 母親は必死で病気の本を集め、ある治療法を見つけました。
「ケトン体産生性食事よ」
ホプキンズ大学病院で検証されていた「ケトン食事療法」でした。
「別の選択をします」
と病院の手術の提案を拒絶します。
 ケトン食事療法とは、糖・炭水化物を減らし、脂肪を増やした食事で、血中のケトン体を増加させ、人為的に絶食状態を作ります。その絶食状態がてんかんの発作を抑えるという治療法です。
 母親はこの治療法に可能性を見出し、息子のてんかん発作を克服していきます。
「マーガレット・サッチャー、鉄の女の涙」で見事な演技でアカデミー・主演女優に輝いたメリル・ストリーブを主演にして1997年に作られたアメリカ合衆国のテレビ映画です。
  (竹田正史/協会理事)