映画紹介№24「世界が食べられなくなる日」
【2012年仏製作 / ジャン=ポール・ジョー監督】
「二十世紀に世界を激変させた技術が2つあります」
「核エネルギーと遺伝子組み換え技術です」
映画は遺伝子組み換え食物と放射能の迫りくる脅威に警鐘を鳴らします。
米国の多国籍企業モンサント社のGM(genetica-lly modified)飼料と農薬ランドアップを長期給餌したラットの実験と福島第1原発事故後の周辺農家の取材を中心に「GM作物刈り取り隊」や「狙われる途上国セネガル」の有機農業活動を交えて伝える衝撃的なドキュメンタリーです。
映画はフランス・カーン大学のセラリーニ教授の動物実験室から始まります。
モンサント社はたった3ヶ月の実験結果からGM作物は安全であると発表。セラリーニ教授はラットの寿命2年間の追跡調査を行ったところ
「4、5ヶ月頃から喉元に 初期の腫瘍が発生した」
「オスには腎腫瘍が多く」
「メスには乳腺繊維種、角 化性棘細胞腫が多い」
「15ケ月目に、五、六セ ンチの腫瘍に肥大化した」
など、GM作物はラットに巨大な腫瘍を発症させ、安全性はおろか、きわめて危険なものである事実が明らかになりました。
現状では、GM作物は飼料や加工食品にも使われ、誰もがGM摂取を避けられません。また、荷役、輸送する港湾労働者やトラックの運転手は、GM作物に付着する農薬ガスを吸って、健康を害されています。
一方、フランスには原発が16施設あり、炉の数56機が稼働する世界第2位の原発保有国ですが、深刻な原発事故を何度も経験しています。
1980年、サンローランデゾー原発で冷却装置が故障、チェエルノブイリ原発事故の2年前の1984年にはビュジェイ原発で冷却水の沸騰事故、1999年にはブライエ原発でもロワール川氾濫で施設が浸水し2号機、4号機の外部電力喪失事故がありました。
そして日本では2011年3月、福島原発1号機が地震、津波で浸水、爆発、メルトダウンとなり、事故前の年間1ミリシーベルトが事故後は20ミリシーベルトにも上昇しました。
2人の子を持ち、現在もう1人を身ごもる母親は、「政府は嘘ばかり言って子どもを守ろうとしない」「放射線汚染したものやGM野菜など食べたくない」
第1号機周辺の農家では
「牛は全部処分した」
「原発がなかったらこんなことにはならなかった」
「地震だけなら我慢もできるが、放射能はどうしようもない」
「今までもっと原発に反対 しなければいけなかった」
監督は人間は自ら作った「ウラン」や「遺伝子組み換え」というモンスターを安易に捉え安易に扱ってきた。そんな魔物を怒らせたら、それを止めることができない。遺伝子組み換え作物も原発の放射線被爆も未来の子どもたちに深刻な問題を残すと、語気を強めます。
この映画は「宇宙戦争」の原作を著したH・G・ウェルズの「神々の糧」(映画「巨大な生物の島」の原作)を思い出させます。世界が食べられなくなる日が本当にやって来るかもしれません。
◆この映画を2015年11月7日午後6時30分より、渋谷区文化総合センター大和田にて無料自主上映します。ぜひ、ご参加ください。 (協会理事 竹田正史)