理事会声明

今改定は新政権による初の改定であり、10年ぶりのネットプラス改定となった。しかし、歯科の厳しい状況を改善するどころか大多数の歯科医院では2.09%にはとても届きそうもない内容であり、歯科の状況をさらに悪化させかねない問題点の多い改定内容である。

第1に、長期維持管理路線の復活・強化が行われている点である。財源の約7割を使い初診料を大幅に引き上げた。同時に歯周病安定期治療(SPT)へも前 回に比べ大幅な点数を配分した。技官会議でもSPTを「推進」し誘導を行っている。一方歯周治療は枠内操作による点数の付け替えに終わっており、再SRP やSPTで長期に管理しなければマイナスになってしまう。SPTは引き上げられたが、依然として歯周基本治療が包括されており納得ゆく点数ではない。低点 数による長期維持管理路線の復活・強化には反対である。

また、枠内操作では歯科医療は充実されない。総枠を広げて医療技術を評価するべきで、改定ごとの枠内の点数いじりでは現場が混乱するだけである。

第2にスタディモデル、歯管の内容の一部など包括が一層進んだことも問題である。技術料は個別に評価すべきである。協会は文書提供の評価も含め包括は即 刻改善するよう求めるものである。また、文書提供については文書量は減ってはおらず、逆に厳しさが増している。きちんと文書を提供できるよう、文書提供の 評価を求める。

第3に時間要件の強化が上げられる。訪問診療では、医科では廃止となった時間要件が歯科では一層厳しくなった。訪問一人目から時間による制限が新たに設 けられ、訪問診療を実施している医療機関ではこれまでの対応を変更せざるを得ず混乱をしている。時間要件は医科と同様に即刻廃止すべきである。

第4に新規技術導入が進まなかった点が指摘できる。08年改定では6技術が新たに保険適用となったが、今改定は医療技術評価分科会の検討結果からわずか1技術のみの導入となっている。学会等の要望に応え、新規技術の導入を積極的に進めるべきである。

第5に訪問歯科衛生指導料の引き上げや、術後専門的口腔衛生処置の新設など歯科衛生士の評価が進んだ点も大きな特徴である。術後専門的口腔衛生処置は手 術の項目に歯科衛生士が位置づけられたこととともに、医療の中での口腔ケアの位置づけが高まったことを評価したい。わずか20点であるが歯科科技工加算に より歯科技工士がはじめて点数表に位置づけられた意味も大きい。

以上のように、今改定はプラス改定の影に低点数による長期維持管理路線の復活・強化、包括化の推進などが進められた。まるでかつての「かかりつけ歯科医 初診料」の亡霊を見る思いである。患者が減少しつつある東京では今改定ではプラス改定とはならない、むしろマイナスとなる可能性が高い。包括した項目を元 に戻し、基礎的技術料を引き上げ、時間要件をなくすなど早急な再改定を強く要求する。