当協会も反対してきた75歳以上で一定の所得がある患者の負担割合が、10月より1割から2割に引き上げられる。配慮措置はあるものの、複雑な制度による窓口での混乱、受診抑制、そのことが原因での重症化が懸念される。
被保険者証は9月に発送
10月からの負担割合変更に伴い、今年は通常の7月に続いて9月にもすべての75歳以上の後期高齢者に対して新しい被保険者証が発行される(表1)。10月以降に診療をする際には、窓口で水色(東京都の場合)の被保険者証の提示を求めて確認する必要がある。
負担増加額が3,000円以下になるよう領収
窓口負担の増加額の上限を3,000円とする配慮措置が、2025年9月まで設けられている。この配慮措置は、同一医療機関での受診の場合は払い戻しではなく現物給付となっているため、医療機関で診療毎に計算し、1カ月当たりの負担増加額が3,000円を超えないように負担金を領収することになる。
今のところレセコンメーカー側で対応する予定となっているが、仕組みとして、負担増加額が3,000円以上になった場合は2割負担から1割負担+3,000円に変更となり、患者への説明など窓口業務が煩雑になることが懸念される(表2)。
複数の医療機関を受診している場合は、合算した1カ月当たりの負担増の上限を3,000円とする配慮措置もあるが、超えた分は最短で4カ月後に患者自身が事前登録した口座へ払い戻される。口座が登録されていない患者には、9月中旬に申請書が郵送される。後期高齢者である患者には、その手続きの負担も増えることになる。
「10月までに治療を終えてほしい」相談増加も?
例えば、後期高齢者である患者Aさんは、「値上がり前に治療できないでしょうか」と主治医に相談をしたとする。10月から負担割合が1割から2割になる可能性があり、家族と相談し、値上がり前に治療を終えたいと考えたようである。このような相談が医療機関で頻発することが危惧される。しかし、歯科治療は症状によって一定の期間が必要になることもあり、すべての治療を9月でまに終わらせることは難しいケースも少なくない。
岸田文雄首相は、物価・賃金・生活総合対策本部を立ち上げ、物価高騰に関する追加対策策定を指示する方針を示した。ただし、追加策はエネルギーと食料品に集中して講じるとしており、医療については触れていない。
10月から負担割合が2割になる対象は約370万人であり、75歳以上の患者の2割にも相当する。引き上げを中止する、あるいは窓口負担金について対策を講じるべきである。