歯科医師による逸品集う/第38回東京保険医美術展

 7月25〜31日、東京・銀座のギャラリー暁で「第38回東京保険医美術展〜2022〜」が開催された。都内の医師を中心に27作品が展示され、協会からは早坂美都理事を含む、3名の先生が出品した。
 早坂理事は、ろうけつ染めの日傘2本をお披露目。淡い赤、青、黄の水玉が鮮やかに日傘を彩り、酷暑の夏に一瞬の涼を感じさせる作品や、花柄を散りばめ、幻想的な世界観が印象的な一品を飾った。
 会員の長尾広美先生は、「Eternal radiance」(和訳:永遠の輝き)というタイトルのもと、スワロフスキーを使った曼荼羅を。均整の取れた煌びやかな作品は、自然と足を止めてしまう存在感を放った。さらに、会員の渡辺吉明先生は3枚の写真を展示。両国駅に並ぶ雛人形、上野公園のハスのつぼみなど、季節感溢れる作品が並んだ。以下に作者の先生より寄せられたコメントを紹介する。

▽早坂美都
 昨年に続き、ろうけつ染めの作品2点を出展した。昨年は名古屋帯、今年は日傘を二つのデザインで染めた。
 溶かした蝋を筆などで布に塗って模様を描き、染料にて染色し、蝋を落として水洗いする。蝋を塗った部分は染め抜かれる。複数の染色のときは、この工程を繰り返す。蝋に、乾燥ひび割れを入れることによって、独特の亀裂模様を作り出すことも多い。
 ろうけつ染めは「バティック」とも言い、インドネシアやマレーシアの特産品になっている。ユネスコの無形文化遺産にも登録されているそうだ。日本では 正倉院宝物に見られるなど、 天平時代から見られる染色技法である。着物などの反物の染色によく見られ、京都の京友禅でも「ろうけつ友禅」がある。今回は水玉と草木のデザインを蝋で描いた。布地は麻で、持ち手は竹である。麻は風を通し、涼やかなので、猛暑をこの傘で乗り切りたい。

▽長尾広美
 曼荼羅作家活動を始めて10年弱、よく「曼荼羅とは何か」と聞かれます。いろいろ解釈はありますが、私はあまり小難しいことにこだわらず、アートの表現手段として捉えています。心赴くままに文様やクリスタルビーズを駆使して仕上げていく過程は、歯科医として外へと気持ちを向けている自分が唯一内へ向かうことができる時間だと感じています。