政府は2024年秋に、健康保険証を廃止してマイナンバーカードと一本化するとの方針を発表した。確かに、国民全てが所持している健康保健証を一本化すれば、一気にマイナンバーカードを普及させることができるであろう。
歯科保険医の中でもその評価は分かれている。時代の流れであるとして賛成する意見が散見される一方、今の健康保険証には問題が無く廃止する意味が解らないなど様々である。
しかし、健康保険証は、医療機関の窓口で提示をすれば、いつでも、どこでも、だれもが、日本国内で等しく医療が受けられる大切なものとして広く国民に定着している。これをマイナンバー普及の手段として利用し、いきなり廃止するということは、国民の命と健康の維持に重大な影響を与えることになる。国はその重要性を認識するべきだ。
そもそもマイナンバーカードは普及が進んでいない。その背景には、政府に個人情報管理を委ねることに対する不信感がある。2024年秋までに全国民に取得させるのは、時間的にもあまりにも無理な計画である。
河野デジタル大臣は10月13日に記者会見でマイナンバーカード未取得者への医療提供を問われ「広報する」と回答した。その後10月28日には岸田首相が「新たな制度を用意する」と方針を変更した。しかし、新生児の健康保険証発行の問題、要介護者がマイナンバーカードを取得できるのかなど、これから検討する課題も多く、まずは試験運用を行い、多くの問題を解消してもらいたい。
国民の医療を受ける権利を保証する健康保険証を拙速に廃止してマイナンバーカード取得を実質義務化のために一本化する政府方針は、今後に大きな禍根と問題を生じさせることは明らかである。我々医療人はこの問題を注視して行く必要があり、健康保険証廃止には反対である。
2022年10月28日
東京歯科保険医協会
政策委員長 松島良次