患者さんから「過去の診療情報を調べました」と言われました。どういうことですか?
本紙2022年11月号の本稿で「医療情報を確認できる仕組みの拡大」の題名で、22年9月11日以降、患者側がマイナポータルで閲覧可能な項目が増えたことをお伝えしました。なお、11月号執筆の時点では、保険医療機関から提出された電子レセプトの内容が反映されるタイミングの問題で患者側が実際にどのような内容を閲覧できるかは不明でした。
実際にどのような内容を閲覧することができるのでしょうか?
マイナポータルで閲覧可能となった項目は、医療機関から毎月請求される電子レセプトから抽出した情報の中の項目(診療情報)が対象となっています。対象となるのは22年6月以降に提出されたレセプトから抽出を開始し、以後3年間分の情報が閲覧可能です。診療情報について、患者側のメリットとして「マイナポータルにアクセスすることで、患者自身が医療機関で受けた診療行為などの情報をいつでも閲覧可能」と示されています。表に、ある患者さんが実際に確認した結果を示します。
表を確認していただくと明細書とほぼ同じ内容であることが分かります。保険医療機関が治療ごとに領収書とともに明細書を発行していれば、保険点数の記載がない以外の内容が閲覧できると考えてよいようです。しかし、レセプトの情報には病名や歯式の診療情報が入っていますので、今後、閲覧できる情報が増えていく可能性があります。
明細書発行は、明細書発行体制加算として、レセプト電子請求を行っている診療所で、医療費の明細書を無料で発行している場合は、再診時に1点を加算するものです。この明細書発行は、20年度診療報酬改定で、公費負担医療にかかる給付による自己負担がない患者(全額公費負担の患者を除く)についても、患者側から求めがあった場合、明細書発行機能がないレセコンを使用しているなど、正当な理由がある医療機関においても明細書発行が義務付けられています。
マイナポータルの利用規約の問題がニュースになっていますが、何が問題だったのですか。
マイナポータルは、行政サービスの手続きや年金の確認など、様々なオンラインサービスの総合窓口になるデジタル庁が運営するウェブサイトです。昨年11月にマイナポータル利用規約の「システム利用者の責任」の項に、利用者に損害が生じても「所管するデジタル庁が一切の責任を負わない」との記載があることが国会質疑で取り上げられました。全国保険医団体連合会は、すでにこの問題を半年以上前に指摘しています。
保険医療機関は、マイナポータルを利用してのトラブルが発生した場合、その責を負わなければならないとされています。例えば、マイナポータルには、患者側ができれば知られたくない医療情報が記載されている場合でも医療機関側は確認できてしまいます。このような不必要な内容まで把握できてしまうことは、保険医療機関にとってリスクとなる可能性があります。
河野太郎デジタル大臣は、11月30日の参院予算委員会で22年内の修正を目指すと答弁していますが、本稿の執筆時点(12月19日)では、修正の発表がありませんので、どのような文言修正になるか不明です。修正が発表されましたら、デンタルブックメールや本会ホームページでお知らせします。
東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史
(東京歯科保険医新聞2023年1月号10面掲載)