消費税増税で歯科医療はどうなる②(全3回)
「歯科医院経営への影響と対策」
◆経営への影響
前回みたように、来院患者数が減少するので、ある程度の収入減は避けられない。特に保険収入の減少が大きい。
一般に、保険医療機関の収入の大部分は保険収入であり、そのうち比較的点数の高い補綴治療の患者が減るため、患者数の減少がそのまま収入減となってしまう。
一方、医療の質にこだわる患者を中心に自費治療の需要はある程度見込めること、そもそも自費収入の比重はそう高くないこと等を考えると、自費収入が減ったとしてもその影響は比較的小さいと思われる。
経費面では、給料賃金・減価償却費は消費税がかからないので増税の影響はないが、歯科材料費・外注技工料・リース料・地代家賃などの経費増が経営を圧迫する。
2006年分確定申告決算書の会員アンケートをもとに個人立歯科診療所の消費税の影響を試算したところ、医業収入3700万円(うち自費収入880万円)、所得金額850万円の場合、消費税率が現行の5%でも51万円もの負担増(損税)になることが分かった(※)。消費税が10%になれば、102万円になる(政府・厚労省が診療報酬点数に消費税分を上乗せしたとしている点については、次回触れる)。
※自費診療で診療代に消費税を転嫁できていない歯科医院も少なくないことから、ここでは50%転嫁したものと仮定し計算した。
◆歯科医療機関4つの経営対策
現在の経済状況で消費税増税を実施すべきでないことは明らかだ。協会は増税中止を求めている。そのことを前提に、ここでは歯科医療機関の対策を考える。ポイントは以下の4点。
第1に、人口減少に伴い中長期的には患者減が予想される。したがって、一人ひとりの患者を長期にわたり定期的に来院するよう啓蒙・教育し、1人でも多くの患者を自院のファンにすることである。そのためのキーワードは、「褒める」「声をかける」「説明する」の3つ。
第2に、疾病構造の変化に対応し、歯周病治療を強化することである。歯周病の怖さを理解していない患者も多いので、歯周病の正しい知識を広げていくことが重要だ。その面で診療現場の努力が必要である。
第3に、高齢患者の増加が明らかなのでその対応を強化すること。これは単に訪問歯科診療の強化を意味しない。高齢者の楽しみは「食」にある。口腔機能の保持により全身の健康とQOLの向上に積極的に関わっていくことがこれからは重要である。
第四に、今こそスタッフを育て、「戦力」にすることである。経営が厳しいからと安易に合理化を考えることは、じり貧を招く。スタッフが安心して誇りをもって仕事ができるよう先生が努力するなら、院内は明るくなり患者は安心して治療が受けられる。