「電子カルテ」とは その2
Q 今、なぜ、電子カルテを取り上げるのですか。
A 前号の電子カルテの普及率には、驚きました。前回の続きで電子カルテについて解説します。今年4月の中医協総会で「医療DX」として全国の医療機関・薬局において、電子カルテ情報の一部の共有、閲覧を可能とする電子カルテ情報交換サービス(仮称)の構築に取り組み、医療機関における標準規格に対応した電子カルテの導入を推進することが示されました。「診療報酬改定DX対応方針取組スケジュール(案)」では、病院、診療所、薬局などが対象であることが示されており、診療所の対象には歯科の表記があり、歯科医療機関にも電子カルテの導入が予定されています。
医療機関に光回線によるオンライン環境を構築させるためのオンライン資格確認システム、マイナ保険証、そして環境構築後にオンライン請求、電子処方箋と、次々に強権的な義務化が予定されています。これらの先に、電子カルテ導入が予定されています。
Q 前号の電子カルテの普及率には、驚きました。
A 厚労省の医療施設調査の結果を示しました(下記参照)。直近の2020 年(令和2年)の調査(聞き取り調査)では、歯科診療所の電子カルテの普及率は48.7%と示されています。先日、協会会員の新規開業医相談会において、事前アンケートでの「カルテの作成方法は?」との問いに対し、電子カルテを導入していると回答された先生を担当させていただきました。お話しを聞いたところ、電子カルテではなく、レセコンから紙に印刷されていました。なお、その時の相談者全体で事前に電子カルテを導入していると回答された会員は6月13日時点で46%でしたが、すべての会員が電子カルテでなく、レセコンでの対応でした。したがって、多くの方がレセコンと電子カルテを間違えて認識されていることがわかります。恣意的ではないにせよ、行政側が現実とまったく違う数字を利用して電子カルテ導入を推し進めることができないようにすることが必要です。したがって、電子カルテとレセコンを間違えないよう、ご確認をよろしくお願い申し上げます。なお、協会は近々、厚労省に対して、正確な調査を行うように要請する予定です。
「電子保存の三原則」とは。
従前、紙媒体による管理が義務付けられていた診療録などが、1999年(平成11年)4月の厚生省通知「診療録等の電子媒体の保存について」によって規制緩和され、いわゆる「電子保存」が認められました。この通知では、医療情報システムの安全管理に加えて、診療に供する情報を扱うため、医療固有の要求事項が示されています。これが「電子保存の三原則」と呼ばれ、「真正性」「見読性」「保存性」の3つの要件で構成されています。
「真正性」とは、第三者からみて作成者の責任の所在が明確であり、かつ、書き換え、消去・混同、改ざんを防止していることです。また、記名・押印が必要な文書については、電子署名、タイムスタンプを付すことが必要です。
「見読性」とは、診療に用いるのに支障がないことと、監査などに差し支えないようにすることで、必要に応じて肉眼で見読可能な状態にできること、直ちに書面に表示できることです。
「保存性」とは、記録された情報が法令に定める保存期間内、復元可能な状態で真正性を保ち、見読できる状態で保存されることです。
将来、電子カルテの導入を強いられた時のため、電子カルテを十分に理解した上で、正しいカルテの記載や算定要件に沿った請求を知識として持つ必要があります。そして協会は、導入費用やランニングコストなどの歯科医業に関係するさまざまな問題に対して、現場の意見を行政側に訴えていきます。
東京歯科保険医協会
会長 坪田有史
(東京歯科保険医新聞2023年7月号8面掲載)