日弁連の10.6「決議」
Q 日弁連が最近の人権と医療、医療のアクセス権に関する「決議」を発表したようですが、その経緯、主な内容について。
政府は本年7月25日に、「令和6年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について」(以下、「概算要求基準」)を閣議決定しました。そこには、社会保障費の伸びを抑制する方針を明記
しています。その方針を背景として本年10月6日、日本弁護士連合会(日弁連/小林元治会長)が「人権としての『医療のアクセス』が保障される社会の実現を目指す決議」を発表しました。以下に、その抜粋をご紹介します。なお、ネット上には全文が掲載されていますので、ぜひご一読していただきたいと思います。
≪ 「決議」抜粋 ≫
「国民健康保険の滞納者は約195万世帯、全利用世帯中の約11%におよぶ。民間の調査によれば、保険料滞納や窓口負担が払えないなどの経済的理由から医療を受けることができずにいのちを落とす人が後を絶たない。(略)国や地方自治体には、人権としての医療へのアクセス権を実効的に補
償するため、医療保険制度、医療提供体制、公衆衛生体制などを整備、拡充する責務がある。(略)当連合会は、国及び地方自治体に対し、医療へのアクセス権を保障するため、医療費日弁連の10.6「決議」抑制ありきの政策を転換して、次の諸施策を実施することを求める。
1 誰もが必要な医療を受けられる医療保険制度の構築
経済的理由等により医療へのアクセスが阻害されることのないよう、⑴必要な医療を受けられずに多くのいのちが失われている危機的状況を踏まえ、医療費の窓口負担のない対象者の範囲の拡大を行うこと⑵多くの保険料滞納世帯が存在することを踏まえ、国民健康保険料の減免範囲を拡大するとともに、(略)保険料についても応能負担を貫徹する施策を速やかに行うこと⑶保険料滞納者にも正規の保険証を交付するとともに、マイナンバーカードと健康保険証の一体化に大きな不安を抱く市民も多いことも踏まえ、現行のままの健康保険証を選択する権利を認めること
2 医療提供体制の充実
3 公衆衛生体制の充実
4 地域を支える存在としての医療・公衆衛生の重要性
5 社会構造上の要因と公的取組
(略)当連合会は、医療と法的支援の相互の協働によって個人の権利を擁護することの重要性に鑑み、今後はより一層、医療関係者との連携を広げ、(略)医療者を起点とした前記の社会的要因に対する取組との協働を進めつつ、人権としての医療へのアクセスを保障するため、力を尽くす決
意である。
以上のとおり決議する。
2023年(令和5年)10月6日
日本弁護士連合会
東京歯科保険協会
会長 坪田有史
(東京歯科保険医新聞2023年11月号11面掲載)