歯科医療を経済から見てみるNo.4 社会医療診療行為別統計(レセプトデータ)からみた年齢別歯科受診の状況

「歯科医療を経済から見てみる」とのタイトルで4回目の連載となります。いろいろな経済資料や経済学的観点から歯科医療を考えていきます。今回は、「社会医療診療行為別統計」から、年代別等の歯科受診の特性を見てみました。

社会医療診療行為別統計は、全国の保険医療機関および保険薬局から社会保険診療報酬支払基金支部および国民健康保険団体連合会に提出され、当該年6月審査分(原則、5月診療分)として審査決定された医療保険制度の診療報酬明細書および調剤報酬明細書のうち、「レセプト情報・特定健診等情報データベース(以下、「NDB」という)」に蓄積されているものすべてを集計対象としました。

今回は、1カ月分の初再診回数を取り上げてみました。すなわち、受診回数を見てみました。2018年をとした場合の各年度の比率を、1示しています。2020年は、新型コロナウイルス感染症の影響で、80を割っていることがみられます。その後、ゆっくりと回復していきましたが、後期高齢者医療は2022年に100超えたのに対し、一般医療は戻っていないことが見えています。しかし、22年の5月は、まだ類相当の影響があったかと考えています。ここまでは、今まで言われてきたことです。次に、年齢階級別の初再診回数を1と同様に18年を100とした場合の各年度の比率を2に示しました。ここで、注目は2020年のカーブです。60歳代後半を中心に、各年齢階級で大きく低下しています。そして、このカーブをよく見ると、この60歳代後半を中心として、両側は緩やかな減少となっています。しかし、この歯科診療全体が多く低下した時期に、10歳代後半は18年レベルを超えていました。意外に思われるかもしれませんが、20年の5月は、この年代にとっては学校も部活も、塾もなく、行き場所を失っている中で、歯科受診が行われたと思われます。これは、あくまでも年度との比較です。

一方、歯科受診者のボリュームゾーンは、60歳代後半から70歳代です(下表参照)。また、10歳代後半は一番受診者が少ない階級であり、全体への影響は少なく、そのため最初に示したような結果になったと考えられます。

必ずしも、歯科受診行動については、全体が同一の行動を取ることは少なく、年代や性別ごとにそれぞれ特性があることが見えてきます。

今回は、NDBのレセプトデータから、受診者の年齢階級データを取り上げてみました。診療行為については見ていませんが、診療行為に関わるNDBが診療報酬改定の際の基本資料に使われていることに関心を持っていただければ幸いです。

 

 

 

 

「東京歯科保険医新聞」2023年12月1日号(No.645)11面掲載

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尾﨑哲則( おざき・てつのり)1983年日本大学歯学部卒業。1987年同大学大学院歯学研究科修了。1998年日本大学歯学部助教授。2002年日本大学歯学部医療人間科学分野教授、日本大学歯学部附属歯科衛生専門学校校長、日本歯科医療管理学会常任理事。2008年日本歯科医療管理学会副会長、2019年日本歯科医療管理学会理事長。ほかに、日本公衆衛生学会理事、日本産業衛生学会生涯教育委員会委員長、社会歯科学会副理事長などを務める。