【談話】細かすぎて良く伝わらない診療報酬改定/政策委員長

細かすぎて良く伝わらない診療報酬改定

中央社会保険医療協議会(中医協)総会は214日、2024年度診療報酬改定案について、厚生労働副大臣に答申書を手渡した。今回の改定は、一つの項目で幾通りかの算定や似たような加算があり、算定方法を見出すまでに時間を要する。保険請求が複雑すぎるため、患者側・医療提供側双方が理解できるように簡素化する方針だったが真逆の結果となった。今回の改定内容を読み解くと、診療体制や個々の診療行為に適正な評価をつけようとした結果なのかもしれない。ただ、手当たり次第に施設基準で縛る仕組みは、かえって混乱を招く。まして、医療を受ける患者の立場で考えた場合、明細書を見ても自身が受けた診療行為が分からないだろう。

▼個別改定項目の評価

物価高騰に対応する医療従事者の処遇改善を初・再診時に算定するベースアップ評価料は、たった1.2%の賃金アップを図るためのもので、医療従事者の人材確保に繋がるとは思えない。また、医療DX推進のために、ばらまかれる加算点数に財源を使われることにも違和感を覚える。

歯科外来診療環境体制加算(外来環)は、医療安全対策と感染対策に分けられた。初診料の注1との棲み分けに注目していきたい。周術期の口腔管理を推進するために対象患者が追加され、回復期の口腔機能管理料も新設された。しかし医科からの依頼がなくては算定できず、歯科疾患管理料等と併算定できないという致命的な要件も改善されておらず、算定率は伸び悩むことだろう。

在宅歯科診療に関しては、居宅への評価を推進する傾向は変わらず、施設への評価は薄利傾向に拍車がかかった。訪問診療の質を上げる議論をするべきではないだろうか。

それでも、当協会が要求してきた歯科医師による歯科訪問診療1の20分要件が廃止されたほか、医科保険医療機関への返書に対しても診療情報連携共有料が認められ、口腔機能管理の評価に対しては一定の前進が認められる。ICTの推進も今後の歯科医療のスタイルに変化を与える一歩になるやもしれない。

今回、最も衝撃を受けたのは金属(金パラ・銀合金)による単冠がクラウン・ブリッジ維持管理料(補管)の対象外になったことである。金パラ・銀合金のみ補管による縛りが無くなり、その他のチタンによるクラウンやCAD/CAM冠には、2年間の保証が残ることになったが、補管以前に起きた様々な問題が再燃しないことを望みたい。

また、「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」の施設基準は、「口腔管理体制強化加算」に名称変更された。その役割が分かりにくいための名称変更が目的にもかかわらず、改定後の内容では役割が明確になったとは言えない。

2024年度診療報酬改定の施行が6月となった経緯は、システムベンダーに配慮したとされているが、これを機に、改定毎に複雑多岐にならないように注視していきたい。施行までに通知や疑義解釈で見直しが図られることを期待する。

▼抜本的な見直しが必要

多くの歯科医療機関の収入の中心は保険診療であるが、保険診療は算定ルールが定められているため、個人の努力では打開策や診療体制の充実も図れない。2024年には85歳以上の高齢者が1,000万人を超え、在宅医療のニーズが大幅に上昇すると言われている。その一方で医療を担う医師・歯科医師不足の問題も指摘されている。にもかかわらず、改定財源が不十分であり、医療の担い手不足の解消などには繋がらない。医療崩壊の危機打開には、抜本的な改定財源の見直しによる診療報酬の大幅な引き上げ、そして物価高騰で苦しい生活を強いられている患者の窓口負担の軽減措置を同時に実施していくことが必要だ。国民に必要な医療を提供できるような診療報酬改定の評価を切望する。

2024年2月27日

東京歯科保険医協会

政策委員長 松島良次