【談話】次期診療報酬は 大幅なプラス改定が不可欠である/政策委員長

次期診療報酬は 大幅なプラス改定が不可欠である

財務省の財政制度等審議会(以下「財政審」)は11月20日、来年度予算案の編成に向けた提案にあたる「秋の建議」の中で、2024年度診療報酬改定について初・再診料を中心に診療所の報酬単価を引き下げ、「マイナス改定」を提言した。
しかし、財政審がマイナス改定の根拠とした機動的調査による診療所における収益・費用・利益の状況は、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、医療機関の収益が落ち込んでいた2020年を土台に比較することで収益の上昇率を強調し、社会保障費を削減したい財務省の意図が反映された合理性を欠いた比較データである。建議の中で用いるには実態を反映したデータではないため、不適当である。
診療報酬改定を巡っては、国の低医療費抑制策が敷かれ、前回の本体の改定率はわずか0.43%に抑えられ、歯科においては2014年度以降の改定率は1パーセントにも満たない状況である。財務省が示す医療費の伸びは高齢人口の増加や、医療費の高度化等による医療費の自然増を示すものに過ぎず、医療機関の経営実態を示したものではない。それにも関わらず、恣意的なデータを持ち出して「極めて良好な経営状況」とすることは、誤った方向に誘導することに他ならない。
現在、歯科材料費、水道光熱費等、物価高騰が歯科医院経営に与えている影響が前回改定時よりも増して大きい。現場からは歯科医院経営の苦しさに耐え切れないという声も上がっている。また建議では新型コロナウイルス感染症の位置づけが5類感染症に変更され、「経済情勢は平時に戻った」と主張しているが、医療機関においては感染症対策が不要になったわけではなく、感染対策にかかる物品の購入や人材確保等の費用の支出が継続するなど「有事」の対応が求められている。
新型コロナの影響や物価高騰で疲弊している医療機関に対してマイナス改定を求めることは、国民に対して安心できる歯科医療の提供を阻むだけでなく、岸田首相が民間企業と同様に求める医療・介護従事者の賃上げの実現は不可能である。地域医療を守り、国民が安心して医療にかかれるためにも次期診療報酬改定は大幅なプラス改定が不可欠である。
よって診療報酬の大幅なプラス改定を強く要望する。
2023年11月27日
東京歯科保険医協会
政策委員長 松島良次

※参考:歯科改定率の推移/20140.99%、160.61%、180.69%、200.59%、220.29