【教えて!会長!! Vol.83】施設基準とベースアップ評価料

【教えて!会長!! Vol.83】施設基準とベースアップ評価料

施設基準とベースアップ評価料

◆6月になり2024年度診療報酬改定が施行されましたが…。

 5月中旬頃から、会員の先生方から非常に多くの問い合わせをいただき、途切れることなく協会の電話が鳴っています。電話が繋がりにくい状況となり、ご迷惑をおかけしてしまい、お詫び申し上げます。このような状況ではありますが、会員の疑問に答えるべく対応していますので、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。

今次改定に多くの会員が疑問を持ち、困惑して協会に助けを求めてきているこの状況について、今後、行政側がどう対応しようと考えているのか問いたいと考えています。すでに新点数説明会を3回開催し、多くの会員や関係者に参加していただきました。この3回の説明会を収録した動画は、デンタルブックですべて視聴できますので、今次改定を理解するために視聴していただくことをお勧めします。

◆会員からの問い合わせの内容は?

 今次改定の内容は、全般的に「複雑で理解できない」ことが多いですが、個別項目で質問が多いのは「施設基準の内容と届出」と「ベースアップ評価料」です。

「施設基準の内容と届出」は、書籍「2024年改定の要点と解説」の「今次改定で新設された主な施設基準」(173ページ)を参照していただき、本書内の項目ごとの解説を読み、自院が該当する、また、届け出したい施設基準があれば対応を検討してください。61日からの算定には「ベースアップ評価料」の届出以外は63日までが提出期限ですが、期限が過ぎても検討していただき、適宜届出を行い、該当月から順次算定していただければと思います。

一方、自院が既に届け出している施設基準に対する問い合わせがあります。関東信越厚生局のホームページに施設基準の届出受理状況の一覧が掲載されていますので、東京都・歯科のPDF内で自院の届出項目、受理番号、算定開始年月日が確認できます。

◆算定するにあたって、注意すべき点はありますか?

 「ベースアップ評価料Ⅰ」を61日から算定する場合、520日付の事務連絡で届出期限が621日に延長されましたので、時間的な猶予ができました。ここで理解しておくべき8項目を挙げます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

①「ベースアップ評価料」の届出・算定は必須ではなく任意です。各医療機関で判断して、届出・算定の可否を決めます。

②「ベースアップ評価料」の対象職員は、歯科衛生士、医療機関で雇用している歯科技工士、歯科業務補助者(歯科助手)のみで、歯科医師は該当しません。なお、受付専任の事務職員、40歳未満の勤務歯科医師、歯科技工所に勤務している歯科技工士(非雇用)の賃上げ措置は、「ベースアップ評価料」とは別に初・再診料(プラス0.28%)のアップ分で対応していると厚労省は説明しています。

③「ベースアップ評価料」で得られた診療報酬は、すべてベースアップ(賃上げ)の原資に限定して使います。なお、定期昇給の原資に充てることはできません。④各医療機関において、厚労省が示した2023年度比較で、24年度にプラス2.5%、25年度にプラス2.0%(2年間で4.5%)のベースアップを目標としています。しかし、これはあくまでも「厚労省の目標値」であり、賃上げ率、またベースアップを行うか否かも、各医療機関の判断に委ねられています。なお「ベースアップ評価料」で得ることができるのは1.2%になるように構築されています。したがって、「厚労省の目標値」に足りない分は、診療報酬のベースアップ評価料以外の部分や賃上げ促進税制を活用するよう示されています。

⑤「ベースアップ評価料」の届出は、届出様式以外に賃金改善計画書の提出が必要です。また、毎年8月(※今次改定前までは7月)に行う定例報告で賃金改善実績報告書による報告が必要です。

⑥詳細な明細書には「ベースアップ評価料」と記載されますので、患者からの問合せに医療機関として対応しなければならないことが想定されます。

⑦賃上げを行うにあたっては、給与(賃金)規定の改定も必要です。給与(賃金)規定が整備されていない場合には、労働条件通知書を新たに提示するなどして、従業員に周知する必要があります。

⑧「ベースアップ評価料」は、賃上げのための特例的な対応です。先のことなので不確定ですが、次回の改定で評価されず廃止される可能性が高いとも言われています。2年後に医療機関側にとって「ベースアップ評価料」分の財源がなくなることを想定しておく必要があります。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

協会では、「ベースアップ評価料」の届出方法についての解説動画を作成しました。届出の記載方法などについてお悩みの先生は、まず動画を視聴してください。動画はデンタルブックのマイページから視聴できます。視聴した上で不明な点がありましたら協会にお問合せください。

全国の医科、歯科ともに今次改定で混乱が生じていることが報告されています。物価や光熱費の上昇などの現状から、スタッフのために何らかの対応をする必要があることは致し方ないです。しかし、この国の現状を招いた責任をまったく取らず、オンライン資格確認、オンライン請求、マイナ保険証などを拙速に押し付けてくることに憤りを感じています。先生方はどうお思いでしょうか。

【東京歯科保険医協会】診療報酬改定 特設ページ

過去の「教えて!会長!!」はこちら

 

東京歯科保険医協会

                                     会長 坪田有史

(東京歯科保険医新聞20246月号掲載)