【連載】退き際の思考/“人生の半分は闘病”も悔いなし 「助けられた」共済制度と歩んだ歯科医師生活(石田昌也さん【後編】)

【連載】退き際の思考 歯科医師をやめる

「息子の方が優れていた」親心溢れる父の“潔さ” 幼少期から育んだ信頼関係で医院託す

石田昌也さん(石田歯科医院副院長) ― 後編(前編はこちら

石田昌也先生と妻の光子さん

 歯科医師としての“引退”に着目した本企画。すでに歯科医療の第一線を退いた先生にお話を伺い、引退を決意した理由や、医院承継、閉院の苦労などを深堀りする。
 今号は、杉並区上荻にある石田歯科医院の副院長、石田昌也先生の後編。息子への医院承継や、大切にしてきた親子関係について聞いた前編に続き、協会とのつながり、「悔いがない」という人生について、妻の光子さんとともに振り返ってもらった。

「退き際の思考」を紙面で見る(「東京歯科保険医新聞」2024年6月1日号)

―協会に入会したきっかけは。

昌也先生:医師である妻の父から紹介されて保険医協会を知りました。「保障内容や利率の面で共済制度が良い」と助言を受け、特に休業保障を勧められたので、深く考えずに共済制度に加入するために入会して、はや50年近くになります。

―長らく協会に入会し、共済制度を利用してみていかがですか。

昌也先生:病気になったり、けがをするとやっぱり「どうしよう」と不安に思うものじゃないですか。そうした時、保険医協会に「助けられた」「救われた」という気持ちが今でもあります。数年前に足を骨折した時も協会に連絡すると、事務局の方がすぐに飛んで来て、保障内容などいろいろと説明をしてくれてほっとしたことを覚えています。

光子さん:協会にはいろんな面で助けてもらっていますね。

昌也先生:それから、スタッフの給与計算や年末調整など医院の経営や税務のことは、妻と税理士さんに任せきりだったんですが、その税理士さんを紹介してくれたのも協会です。税理士さんには、保険・自費収入から経費計算まで、毎月きっちりと会計のサポートをしてもらい、とても良かったと思っています。

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病とともに歩んだ歯科医師人生

ー長い歯科医師人生の中、さまざまな苦難もあったと思います。

光子さん:大変だったことと言えば、夫は働き盛りの40歳頃に網膜剝離を発症し、失明するかもしれないと宣告されました。

昌也先生:私は諦めが早く、その時に「もう続けられないんだな」と思い、歯科医師を辞める覚悟もありました。それでも入院中に「この先をどうしようか」と考え、失明しても患者さんの問診だけならできるんじゃないかと、その後のことに目を向けていましたね。

光子さん:退院後、幸いにも段々と症状が回復しました。入院中の半年間と、退院直後の期間は、知り合いの先生に助けてもらい、その後、運良く治療ができるまでに復帰しました。

ー大変な経験の中でも、石田先生の強さを感じるお話ですね。

光子さん:ただ、翌年に腎臓の病気が分かり、今でも闘病を続けています。

昌也先生:私の人生の半分は病気とともにあります。でも人生78年。地方から東京に出てきて、歯科医師として開業して、たくさん病気はしたけどまったく苦ではありません。「嫌な人生だったな」「歯科医師はつまんなかった」という感情はなく、自分の人生に満足しています。今は身体のこともあり、妻がいないと外にも出られないけれど、何も悔いはありません。それは協会の共済制度の助けがあったからこそで、そんな人生観でここまでくることができました。これから何を楽しみに生きる、ということはないけど、この前は息子夫婦と焼き鳥を食べたり、そんなふうに家族と食事をしたり、孫と将棋をしたり、楽しみながら生活をしています。最初はかわいそうだと思って、孫を勝たせるように将棋を打っていたんですが、段々と上達してきて、先日は、テレビを観ながら片手間で駒を打つ孫に負けてしまいました。

光子さん:主人を近くで見ていると、歯科医師として現役時代から仕事もプライベートも全力で、普通の人ではできないくらい人生を謳歌してきたと感じます。「悔いがない」というのは本心なんだと思います。


ー最後に引退を考える先生にメッセージをお願いします。

昌也先生:歯科医師は定年退職がないので、ある程度長く続けることができる仕事です。これは技術がある歯科医師の特権です。だけど、体力、視力の問題や、何か不安に思っていることがあれば、人生設計を考え直して、どこでリタイアをするか家族できちんと考える必要があります。あとは、患者さんが退き際を教えてくれる部分もあると思います。年齢を重ねれば、若い患者さんは自然と来なくなったり、世間からの見られ方は変化するんじゃないかな。でも長く診てきた高齢の患者さんは、「あの先生は義歯を作ったり、調整するのがうまい」と信頼して来院するかもしれません。そうした棲み分けは世間がするものかなと思っています。

ー本日はありがとうございました。

~編集後記~
庭先で撮影した桜の木です―。協会宛てに届いた1枚の写真を本紙に掲載したご縁で石田先生と初めてお会いした。今回、「私でよければ」と企画にご協力いただき、約1年ぶりに石田先生のもとへ。満開の桜は青々とした新緑に移り変わっていたが、変わらずお話し好きな先生の様子と、仲睦まじいご夫婦のかけ合いに心温まる取材となった。
協会設立初期からの会員である石田先生。病を患いながらも逞しく、家族思いの優しき人柄で、こうした先生方とともにある協会半世紀の歩みを感じるひと時であった。

石田先生の「退き際の思考」前編はこちら

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「退き際の思考」を紙面で見る(「東京歯科保険医新聞」2024年6月1日号)

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