歯科医療点描⑭ かかりつけ医、かかりつけ歯科医、そして「か強診」のこと/アンケートでも「か強診」への根強い不信は明らか

かかりつけ医、かかりつけ歯科医、そして「か強診」のこと/アンケートでも「か強診」への根強い不信は明らか

◆待合室ポスターが語ること 

「かかりつけ医をお持ちですか?」との赤い太字の見出しが目につきました。九月初めの日本医師会ニュース添付「健康ぷらざ」です。診療所の待合室に掲示するポスターのようなものです。

 「かかりつけ医」とはどんな医師でしょうか。それには「何でも相談でき、必要な時には専門医や専門の医療機関に紹介してくれる身近で頼りになる医師」とありました。

◆頼りがいある医師になることは大変

高齢社会になり、患者はがん、循環器、認知症など診療科の異なるいくつもの病気を抱えています。患者の身近にいて、多くの病気の最新知識を持ち、相談できる医師がいれば患者は本当に助かります。

とはいえ、医療の範囲は非常に広いので、頼りがいのある医師になるのは大変なことです。 このポスターでは、日本医師会がそのための研修をしていることを紹介しています。また、こうした医師が一定の条件を満たせば、国は診療報酬で優遇しようとしています。

◆かかりつけ歯科医そして「か強診」

その歯科版が、治療も予防もできる「かかりつけ歯科医」で、その拠点となる診療所が「か強診」というわけです。

「か強診」をテーマにした7月号の本コラムでは触れませんでしたが、「か強診」は歯科医師、歯科衛生士が各1名以上か、複数の歯科医師がいることも条件になっています。歯科医師のほとんどは義歯などの治療専門家ですから、予防のプロの歯科衛生士がいたほうが患者に役立つのは確かでしょう。それだけではかかりつけ歯科医が増えすぎると考えたのか、業者への返礼か、口腔外バキュームやAEDの設置を加えたことが、厚生労働省の挙動を怪しげに見せています。

◆会員アンケートから

先日、協会から98日現在、約5200名の会員のうち返信のあった476名の会員アンケートの内容をうかがいました。

それによると、「か強診」には203名(43%) が「反対」で、「やむを得ない」192名(40%)、「賛成」は45名(9%)でした。

また、「届出しない」107名、「できない」170名を合わせると277名(59%)で、「届出した」36名(8%)、「未定」156名(12%)。

今後の対応については、「施設基準の改善」234名(49%)、「廃止」145名(30%)に対し、「このままでよい」は51名(11%)にとどまりました。

1割にも満たない回答率の段階で、会員の意向とまでいっていいのかどうかはありますが、「か強診」への根強い不信は明らかです。

 

 医療ジャーナリスト 田辺功

「東京歯科保険医新聞」2016101日号6面掲載

  【略歴】たなべ・いさお/1944年生まれ。68年東京大学工学部航空学科卒。同年朝日新聞社入社。2008年、朝日新聞社を退社後、医療ジャーナリストとして活躍中。著書に「かしこい患者力―よい病院と医者選び11の心得」(西村書店)、「医療の周辺その周辺」(ライフ企画)「心の病は脳の傷―うつ病・統合失調症・認知症が治る」(西村書店)、「続 お医者さんも知らない治療法教えます―こんな病気も治る!」(西村書店)ほか多数。