医科系メディアから見た歯科医療界⑥ 治療効果上げ、信頼関係作る「笑い」の効用/対外的には看板倒れの歯科も

治療効果上げ、信頼関係作る「笑い」の効用/対外的には看板倒れの歯科も

 医療費抑制や健康寿命の延伸を目指し、予防医療の重要さが指摘されている。その割には、国は診療報酬で予防医療に対しインセンティブを付けず、「医師は治療するのが医療」と考えている。予防薬は有効性の証明が難しい上、予防医療は製薬企業の商売敵になるので製薬企業は協力しない。患者の中にも健康意識の高い人と低い人がいる。健康長寿を目指す中高年なら、せめて予防医療以前のウォーキングやヨガなどの運動をしたり、セルフメディケーションで軽度な不調は自ら手当てしたり、多少奮発して人間ドックを受けたりしたいものだ。

◆医学的効果検証研究も

これらに加え、注目されているのが「笑い」だ。今年の2月、近畿大学と吉本興業が笑いの医学的な効果検証研究を始めたと報じられた。もとより笑いは心や体に良いことが医学的に実証されつつあり、病気の予防や治療でも効果が期待されている。以前取材した土浦協同病院では「笑い」や「癒やし」を通じて、患者の自然治癒力や免疫力を高めるプロジェクトを展開していた。当時の病院長が、「笑い」の医学的効果に着目する医師の高柳和江「笑医塾」塾長と出会ったのがきっかけだった。

職員はプロジェクトの研修を通じ、患者を元気づけたり、笑顔を引き出す対応や言葉のかけ方などを身に付けることで、自身や職場、家庭の雰囲気も明るくなる副産物があったという。

医師の資格を持つ落語家の立川らく朝さんは「健康落語」を売りにしているほどだ。また、林家きく麿さんの「歯ンデレラ」は、大企業のトップがガラスの靴ならぬ入れ歯を落とした女性を探すのだが、それは求婚でなく、上手な入れ歯を作れる歯科医師を紹介してもらうため。医科に関しても、こんな小噺がある。「お隣の奥様が交通事故で顔がグチャグチャになったそうよ」「あら、お気の毒」「でも、最近の医療はすごいわね。手術したら、元の顔に戻ったそうよ」「あら、お気の毒」。

◆「笑い」を売りにする

歯科テレビや劇場でお笑いを頻繁に見るわけにはいかないが、要は心の持ちようなのだろう。日常生活の中で笑いの素を探しながら、プラス志向で過ごす。医師と患者もリラックスしてコミュニケーションを取り、信頼関係を作るのが大切だ。

電車の中で偶然、子どもたちが笑う写真とともに「歯医者で笑うなんて」とのキャッチが書かれたポスターを見た。歯科医師が子ども目線のコミュニケーションを重視して治療に当たっているという。興味を持ち、取材を申し込んだが、事務方により門前払い。取材趣旨をいくら説明しても、以前ひどい目にあったことがあるのだろうか、雑誌にはマイナスイメージを持っているようだった。こんな歯医者、笑えない。

 

筆者:元「月刊 集中」編集長 鈴木義男

「東京歯科保険医新聞」201781日号6面掲載