医科系メディアから見た歯科医療界⑦ 厚労族議員に積極的に関与し育てる戦略を/政治的解決が必要な問題が多いが故に

厚労族議員に積極的に関与し育てる戦略を/政治的解決が必要な問題が多いが故に

 消費税率の引き上げに反対でも、社会保障財源の確保のため三師会(日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会)は総選挙で、消費税増税を前提に教育費無償化等の公約を掲げた与党を応援せざるを得なかった。野党の主張は増税の「凍結」「中止」か「延期」だったからだ。

まして次期診療報酬・介護報酬同時改定を控え、与党政治家の理解が必要な時期でもある。小池百合子東京都知事が代表を務める希望の党の動向が注目されたが、三師会に動揺はなかった。結果は与党の大勝だ。

◆力が弱まる厚労族

『集中』の取材で、中央社会保険医療協議会委員の猪口雄二・全日本病院協会会長は「衆参の厚生労働委員会の議員は重要。政治でないと解決できない問題がたくさんあるから」と話す。

業界のロビイストのような族議員は問題だが、社会保障政策に関する知識や調整能力に長けた族議員は必要だと思う。

しかし、官邸主導の政策決定が続く上、厚労族の力も落ちているのではないか。厚労族ドンの丹羽雄哉氏は引退、尾辻秀久元厚労相も以前のような力はないという。医師の鴨下一郎元環境相は安倍晋三首相と自民党総裁の座を争った石破茂氏の側近で日医にも近く、微妙な立ち位置にある。田村憲久元厚労相、厚相を務めた橋本龍太郎元首相の二男である橋本岳自民党厚生労働部会長はまだ若い。

ある病院団体役員は「厚労族の力が落ちている中、政界も病院界も厚労族議員を育成することを真剣に考えるべきだ。病院団体の役員も政治家との付き合い方が下手な人が多い。現職の団体トップで、唯一、上手なのは、日医の横倉義武会長だ。政治家といかにうまく付き合うかも考える必要がある」と話す。

◆貴重な歯科系議員の会

10月5日、参議院厚生労働委員会委員長に就任した島村大自民党参院議員(歯科医師)を励ます会が、都内のホテルで開かれた。会場には医師会や歯科医師会、企業人らが詰めかけた。会場には、世耕弘成経産相、河野太郎外務相、加藤勝信厚労相、中川雅治環境相の四大臣が挨拶し、参加者を驚かせた。島村参院議員は、同じ横浜を選挙区とする菅義偉内閣官房長官に近いといわれているが、衆院議員である河野、加藤両大臣が、自らの選挙もある中、会場に駆け付けたことに対し、参加者の一人は「それだけ自民党の危機感を感じた」と話す。

島村氏は現在、参議院厚生労働委員会委員長という要職にあり、また、元日本歯科医師連盟の理事長を務めた経験もある。貴会としても、積極的にアプローチしてはいかがか。

人間関係は「モノの交換」という考え方が心理学にある。モノとは、良い意味で遣り取りしているすべての事柄を指す。顔を出すことで相手に満足を与え、次は相手がモノで応えてくれる。日本の政治家は義理堅い面があるので、ここは大事だ。釣り合いが取れている状態を「衡平」という。与えなければ、相手の心理的負債となる「不衡平」すら生じない。

 

筆者:元「月刊 集中」編集長 鈴木義男

「東京歯科保険医新聞」201781日号6面掲載