医科系メディアから見た歯科医療界⑩ 開業医にも求められているパラダイムシフト/医科に先行する歯科の「開業」

開業医にも求められているパラダイムシフト/医科に先行する歯科の「開業」

 次期診療報酬改定については、全体の改定率はマイナス、人件費などに充てる本体部分はプラスとすることで決着した。財務省は本体もマイナス改定を求めていたが、安倍政権を支持する日本医師会のプラス改定の主張を政権が受け入れた。

ところで、改定率も重要だろうが、長期的なトレンドに目を向ける必要がある。それは、人口と財政と技術の変化である。

◆長期的なトレンドに注視する必要が

人口は、少子高齢化により税や社会保険料を払う世代が減少する一方、高齢化で急性期より慢性期の疾患が増える傾向にある。対策として、地域包括ケアシステムの構築が進められている。

財政では、法人税収の大幅減収に伴い、社会保障費の安定的財源として消費税に頼らざるを得ない状況だ。201910月に、消費税率を現在の8%から10%へ引き上げることが予定されているが、教育無償化の財源を社会保障費のカットで捻出すれば、社会保障が圧迫されるだろう。

技術では、AI(人工知能)やICT(情報通信技術)を活用し、がんゲノムや再生医療などの基盤を整備、コストなどを最小限に抑制できる体制作りが進められている。

少子高齢化についていえば、高齢化で医療ニーズが増える一方、医療に従事する働き手が減少する。その結果、医療機関では採用難となる。

◆社会の変化踏まえた経営者としての課題

トレンドとしては病院数が減少し、診療所数は微増している。医師数は国家試験により新規参入数はあまり変わらないので、病院に就職できない医師が増え、開業したり大型診療所に就職するケースが増える可能性がある。開業医や大型診療所のトップは社会の変化を見据え、医療マーケティング、ブランディング、採用やマネジメント、自由診療などが重要課題となる。

医科で今後起きそうな事態は、歯科ではすでに起きているだろう。元々、総合病院で働く歯科医師はほとんどおらず、開業がキャリアパスのメインとなっている。「予防」や「審美」の観点から、自由診療も進んでいる。医科の開業医にとっては供お手本僑になるだろう。

以前、『集中』で取材した医療法人社団ナイズの白岡亮平理事長は、医科の開業医の成功例だ。32歳で開業。38歳の現在、診療所を都内5カ所に展開、ICTを活用したりして多拠点運営を成功させている。「社会に適応した診療所は、患者さんの納得を得られ、社会保障制度的にも妥当性のある医療を提供でき、かつ継続可能性の高い経営をしている」と話す。開業医にもパラダイムシフトが求められている。

 

筆者:元「月刊 集中」編集長 鈴木義男

「東京歯科保険医新聞」201811日号5面掲載