【荻原博子さん連載】マイナ保険証の〝失態〟を追う~このまま見過すことはできません~ 第3回 急増しそうな「偽造マイナンバーカード」の悪用に気をつけよう!

第3回 急増しそうな「偽造マイナンバーカード」の悪用に気をつけよう!

 偽造マイナンバーカードを使った犯罪が増えています。

大阪府八尾市の松田のりゆき市議が、偽造マイナカードで自分のスマホを乗っ取られ、225万円のロレックスの高級時計を不正購入されました。外出中に、突然携帯電話の電波が使えなくなり、おかしいと思って携帯ショップに問い合わせると、「この電話は、名古屋市内の店舗で機種変更されています」と言われたのです。乗っ取られた携帯にはPay Payやクレジットカードが紐づいていたので、すぐさま利用を停止しました。ところが、犯人はすでにPay Payなどで10万円以上を不正利用していたほか、ショッピングサイトのIDやパスワードを悪用し、クレジットカードが不要のローンを組んで、なんと前述のロレックスをすでに買って受け取った後でした。同様の詐欺は、東京でも起きていて、風間ゆたか都議が、偽造マイナカードで携帯電話が機種変更され、10万円以上の被害に遭っています。

◆偽カードで銀行口座を作られ1,400万円を騙し取られる

偽造マイナカードで、自分名義の銀行口座を開設されてしまい、1,400万円を騙し取られた詐欺被害も出てきています。

被害者は北海道に住む70歳の女性。今年1月に、総務省の職員や警察官を名乗る詐欺師から「あなたの口座の個人情報が流出したようなので調査しています」という電話を受け、指示されるままにスマホのビデオ通話でマイナカードを見せました。

その後、詐欺師は、女性を騙して銀行口座に1,400万円を振り込ませました。これまでの詐欺と違うのは、女性がビデオ通話で見せたマイナカードをもとに、偽のカードをつくって女性になりすまして銀行口座を開設した形跡があることです。

いま金融機関では、高齢者のオレオレ詐欺被害などを警戒して、多額の振り込みをチェックしたり、高齢者に警告を発したりしています。ですから、お金を振り込む前に多くの犯罪が阻止されていますが、振込先が本人名義の口座だと、金融機関には単なる資金移動にしか見えない。こうした、マイナカードを悪用した新たな詐欺がまだまだ増えそうです。

◆スマホの盗撮にご用心

実際に、マイナカード偽造の現場も押さえられています。

昨年124日、警視庁国際犯罪対策課が、自宅でカードなどを偽造していた中国籍の女を逮捕。情報を印字する前の無地のカード約750枚が押収されました。カードには、本物そっくりのICチップのようなものも埋め込まれていました。逮捕された女は、中国から届いたPCやプリンターを使用し、偽造に必要なデータをWe Chat(ウィーチャット)を通じて受け取っていたということですから、国際的、組織的な犯罪の可能性が高いのではないでしょうか。

携帯電話の新規契約は、マイナカードと月々の料金支払い口座があればできますから、足がつかない偽マイナカードで携帯電話が手に入れば、詐欺はますます横行するでしょう。

国は、「マイナカードは顔写真入りのため、対面での悪用は困難」「なりすましはできない」と大々的に宣伝し、身分証明書として持ち歩くことを奨励しています。

けれど、私は、危ないからやめた方が良いと思います。落としたら再発行に2ヶ月もかかるし、カードを出した時に背後から近づいてきた悪意ある人がこっそりスマホで盗撮したら、簡単に偽のカードを作られ、携帯電話を乗っ取られたり、本人名義の銀行口座を作られてしまう可能性があるからです。

そういう意味では、どうしても必要な時以外は、絶対にカードは持ち歩かないほうが良いと思います。

 ◆「東京歯科保険医新聞」2024年6月1日号12面掲載

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経済ジャーナリスト 荻原 博子

プロフィール:おぎわら・ひろこ/経済ジャーナリスト。家計に根ざした視点で経済を語る。バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞・経済誌などに連載。新聞、雑誌等の連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。近書に「マイナ保険証の罠」(文春新書)、「マイナンバーカードの大問題」(宝島社新書)など。