保険証を残そう! /署名にご協力を!!
Q 12月2日まであと3カ月ですね。
A 本年12月2日から健康保険証の新規発行が終了となります。患者さんの中には、現在お持ちの健康保険証が12月2日から使えなくなると勘違いされている方もいらっしゃるなど、既に混乱が起きていることが多数報告されています。なお、発行済みの健康保険証は最長1年間有効となる経過措置があります。現在の公的医療保険は、居住地や勤務先が変わった場合、自治体や健康保険組合などが新規の健康保険証を発行しています。しかし、12月2日以降は、加入する保険者が変更された時点で経過措置は終了してしまいます。一方、75歳になって後期高齢者医療制度の対象になった場合も同じです。現在、後期高齢者医療制度に該当されている方は、継続される25年7月頃に経過措置が終了します。したがって、1年間の猶予がない方が必ず出てきます。これも、混乱を引き起こす原因の一つとなっています。
他方、健康保険証の新規発行が終了すると、マイナンバーカードを持っていない人、持っていても健康保険証とひも付けしていない人、介護が必要な高齢者や子どもなど、カード取得が難しい方が保険診療が受けられるように、保険者が保険証の代わりに「資格確認書」を無料で発行します。この「資格確認書」が発行されるタイミングは各自治体などに任されていますが、いまのところ不明です。地域によって差が出ることが想定されますから、この件も混乱に繋がりかねません。
これらの患者さん側の混乱に直接対応する可能性が高いのは、現場の医療機関です。既に、患者さんがマイナ保険証で受診された場合、別人の情報がひも付けられていたり、読み取りが不具合となったりするトラブルの報告が協会に届いています。
国は、マイナカードには顔認証システムがあって、他人がなりすますことを防止できると言っています。しかし、暗証番号を入力すれば顔認証をしなくても資格確認ができてしまいます。したがって、なりすまし防止には無効ですからマイナ保険証のメリットにはなりません。
さらに、12月2日以降に窓口で患者さんの保険者番号を確認する方法が、現行の健康保険証を提示する、カードリーダーでマイナ保険証を読み取る、「資格確認書」を提示する、という3つのパターンに加え、さらに6種類あり、合計9種類になります。受付の際、これらの方法を把握しておかなければユニットに通して保険診療を開始できませんし、対応が滞れば現在のようなスムーズな診療ができなくなる可能性も否定できません。そもそも、12月2日以降は、現在より受付窓口の業務負担が増えることが想定されます。
Q 政府が強硬な姿勢で、現行の保険証を廃止してマイナ保険証を推進する方向なのはどうしてですか。
A マイナ保険証の利用率を上げるため、国や行政側は多額の予算をつぎ込むなど、躍起になっている姿勢を感じます。ご存じの通り、マイナカード取得・マイナ保険証利用を強要するマイナ保険証利用促進キャンペーンが行われています。頼んでもいないのに先生方に「総合ポータルサイト」からマイナ保険証の利用率などが勝手に送られてくることをどう思われているでしょうか。
この健康保険証の廃止の動きの裏には、さまざまなビジネスや多くの利権が繋がっていることが囁かれています。医療DXにメリットがないとは断言できませんし、推測で記すことは止めておきます。しかし、個人情報を利活用すると言われても、個人としては「気味が悪い」の一言に尽きます。
また、今次診療報酬改定でマイナ保険証の利用促進を主目的として「医療情報取得加算」「医療DX推進体制整備加算」などが新設され、技術料などに使うべき診療報酬の財源が少なくなりました。マイナ保険証の推進のために改定財源を使われたことは、歯科医療が軽視されたと言えます。
協会は、歯科保険医の経営を守ることを目的の一つに挙げています。したがって、反対意見だけを声高に訴えるだけでなく、状況に応じて、また個々の先生方の事情を踏まえながら、対応しています。しかし、健康保険証の廃止だけは日常の歯科医業を妨げる原因になる可能性が少なからずあります。したがって、引き続き「健康保険証の存続を求める」請願署名と、今後実施予定の「オン資トラブル調査(第4弾)」へのご協力をお願いします。
なお、協会は、将来に向けて「医療のデジタル化」に反対しているわけではありません。とにかく現行の健康保険証で困っていないのですから、患者・国民の皆さんと医療機関のために現行の健康保険証が使えるように残してほしい、そのことを強く訴えているのです。
東京歯科保険医協会
会長 坪田有史
(東京歯科保険医新聞2024年9月号掲載)