問い合わせ増える「薬剤長期収載品の選定療養」/方箋の記載方法は?

問い合わせ増える「薬剤長期収載品の選定療養」/方箋の記載方法は?

10月1日より、先発医薬品(後発品のある長期収載品)を患者の希望で処方した場合に、先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当の料金を「特別の料金(選定療養)」として患者から別途受領する制度(下記図参照)が導入された。 協会には問い合わせが多数寄せられているため、前号の概要に続き、処方箋様式の記載方法と下記の疑義解釈を解説する。
協会としては、製薬会社による「限定出荷」「供給停止」などの出荷制限により、医薬品不足が続いている中、先発医薬品を患者が希望した場合に患者から特別の料金を徴収することは、混合診療解禁に等しく、問題のある取り扱いであると考えている。

1.選定療養の対象となる医薬品
対象医薬品リストは、厚生労働省のホームページ「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」から検索できる。長期収載品のすべてが選定療養となるわけではなく、医療上の必要がある場合や後発医薬品の在庫状況等を踏まえ後発医薬品を提供することが難しい場合は、選定療養の対象にはならない。
【対象となる歯科の医薬品の例】
ボルタレン錠25㎎、ロキソニン細粒10%、ロルカム錠2㎎、ロルカム錠4㎎、ジスロマック錠250㎎、クラビット錠500㎎など。
2.特別の料金と患者負担
先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当の料金を「特別の料金(選定療養)」として、患者から別途受領する。「特別の料金」は課税対象であるため、消費税相当分を加えて受領する。長期収載品を選定療養の対象とする場合の後発医薬品の価格との比較について、厚労省はリストを作成している。リストに示されている額はあくまでイメージであり、実際に窓口で負担する額とは異なる。
3.処方箋の記載方法
(1)選定療養の対象とならない場合(院内処方・院外処方)
医療上の必要があると認められる場合、および後発医薬品の在庫状況等を踏まえ、後発医薬品を提供することが困難で選定療養の対象とならない場合は、下記「(別表1)」のレセプト表示文言より理由に該当するコードを選ぶことで、レセプトの摘要欄に表示させる。

(別表1)

(2)処方箋の記載方法
①選定療養の対象とならない場合
処方箋の「変更不可(医療上必要)」欄に「✓」または「×」と記載し、「保険医署名」欄に署名または記名、押印する(記載例参照)。
記載がない場合、薬局での患者聴き取りにより患者が「患者希望」と回答すると、選定療養の対象となる可能性がある。
②選定療養の対象となる場合
処方箋の「患者希望」欄に医薬品ごとに「✓」または「×」と記載する。

記載例

4.長期収載品の処方等の取扱いに関する疑義解釈(一部抜粋・一部改編)
【後発医薬品を提供することが困難な場合について】
問1「当該保険医療機関または保険薬局において、後発医薬品の在庫状況等を踏まえ、後発医薬品を提供することが困難な場合」について、出荷停止、出荷調整等の安定供給に支障が生じている品目かどうかで判断するのではなく、あくまで、現に、当該保険医療機関または保険薬局において、後発医薬品を提供することが困難かどうかで判断するということでよいか。
 そのとおり。
【公費負担医療について】
問2 医療保険に加入している患者であって、かつ国の公費負担医療制度により一部負担金が助成等されている患者、子ども医療費助成等のいわゆる地方単独の公費負担医療の対象となっている患者が長期収載品を希望した場合について、長期収載品の選定療養の対象としているか。
 国の公費負担医療制度の対象となっている患者やこども医療費助成等のいわゆる地方単独の公費負担医療が対象となっている患者が長期収載品を希望した場合についても、他の患者と同様に、長期収載品の選定療養の対象となる。
なお、医療上必要があると認められる場合に該当する場合は、従来どおりの保険給付として差し支えない。
問3 生活保護受給者である患者が長期収載品を希望した場合は、どのように取り扱うことになるのか。
 生活保護受給者については、 長期入院選定療養以外の選定療養は医療扶助の支給対象とはならないとしている。このため、生活保護受給者である患者が、医療上必要があると認められないにもかかわらず、単にその嗜好から長期収載品の処方等または調剤を希望する場合は、当該長期収載品は医療扶助の支給対象とはならないため、生活保護法に基づき、後発医薬品処方等または調剤を行うこととなる。
なお、長期収載品の処方等を行うことに医療上必要があると認められる場合は、当該長期収載品は医療扶助の支給対象となる。