全国で歯科技工士養成学校の募集停止が相次いでおり、歯科技工を担う人材不足が懸念されている。将来、国内での歯科技工物の製作が危ぶまれる状況にあり、各マスメディアからも大きく注目されている。協会は独自に、2020年、23年と都内の歯科技工所にアンケート調査を実施し、技工士・技工所の就労環境や診療報酬の改善を求める要請やメディアへの発信資料として活用してきた。
このほど、取り組みをさらに強化するため、保団連(全国保険医団体連合会)が中心となり、全国で調査を実施。東京都内では、技工所1千531施設にアンケート用紙を送付し、138施設の回答が寄せられた(回収率9.0%)。
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2024年 歯科技工所アンケート結果(東京都)
まず、開設者の年齢は50代、開業年数は30年~39年が最多。開業形態は63.8%が個人開業で、うち1人技工士の技工所が60.9%、事務員も含め従業員数3名以下の事業所が79.7%と小規模な事業所が中心であった。30.4%の開設者が週の労働時間が71時間以上、65.2%が週休1日以下、38.4%が可処分所得300万円以内と回答しており、厳しい就労状況が明らかになった。
次に、24年度診療報酬改定で多くの補綴物の点数が引き上げられたが、技工物を値上げした割合は20%前後であり、多くの技工所が引き上げ分を価格に反映できていない現状がうかがえた。保険の補綴物の値上げ希望金額については、現行の約2倍を希望する回答が目立った。また、33.3%の技工所が「歯科医院からの再製作依頼が技工業務で最も負担と感じている」と回答した。
後継者については、84.8%が「いない」とし、自分自身の5年後については、21.7%が「歯科技工士を辞めている」、26.8%が「わからない」と回答。今後の技工士不足が非常に危ぶまれる結果となった。
技工士不足の解消のために改善が必要だと思うことについて、89.9%が「技工料金の全体的な値上げ」を挙げており、歯科界が一丸となって診療報酬の大幅引き上げを要求することの重要性が示唆された(図参照)。今回の調査結果は協会ホームページに掲載しているので、ぜひ、ご覧いただきたい。全国版の調査結果は、保団連から来年2月頃に公表される予定である。