2017年6月の総会で会長を拝命し、8回目の年頭所感として新年のご挨拶をさせていただきます。
一昨年の年頭所感で本会会員数5,951名、昨年は6,030名と6,000名を超え、順調に会員数が増加していることをご報告しました。さらに24年12月1日時点では6,036名の会員数となりました。東京都内の歯科保険医の任意団体として、既会員の先生方からのご紹介を含め、多くの先生が本会の会員になっていただいたことにこの場をお借りして心から御礼申し上げます。また、未入会の先生におかれましては、歯科医業を行ううえで本会入会によって多くのメリットがあると自負しております。ぜひ、ご入会のご検討をよろしくお願いいたします。
会員数は増加していますが、微増という状況です。その内容を見ると多数のご入会がありましたが、その反面、ご退会が多かったことが24年の特徴でした。ご退会された方々に聞き取りをした結果、「高齢」を理由とするものが最多でしたが、「オンライン資格確認システム」「マイナ保険証」「レセプトのオンライン請求」がその背景にあると推察されました。そのうち、すべての前提となる「オンライン資格確認システム」に関しては、義務化撤回を求める訴訟の判決が昨年11月28日に出されました。残念ながら判決の結果は「棄却」でしたが、判決文に多くの疑問が残り、12月12日に控訴の手続きが行われました。なお、「東京歯科保険医新聞」2025年1月1日号(3・7面)に関連記事を掲載していますので、ご一読いただければ幸いです。
昨年は2年ごとの診療報酬改定だけでなく、3年に一度の介護報酬改定、および障害福祉サービス等報酬改定が重なる6年に一度の〝トリプル改定〟でした。そして従来、診療報酬改定は4月1日施行でしたが、今次改定は4月1日に改定、施行は2カ月後の6月1日と、大きな変更がありました。改定は、 65歳以上の高齢者の割合が全人口の約35%に達すると推測されている「2040年問題」を背景に医療費の抑制が意識された改定といえるものです。さらに今般の物価高騰の対策として「賃上げ」、すなわちベースアップ評価料が診療報酬上に設定されたことが特徴といえます。
ベースアップ評価料を始め、新たな項目、算定要件、加算、施設基準や届出などが多数あり、複雑で理解が難しいものでした。会員からの保険請求関連の質問や疑問の電話による問い合わせは、一昨年、昨年と比較して2倍近い数と非常に多く、協会の電話は絶えず鳴り続ける状態でした。これらの対応は、本会の重要な会員サポートの一つですから全事務局員には、丁寧に行うようお願いしました。一方で人員不足、および労働環境整備のため会員に対しては断腸の思いでしたが、昨年9月1日より電話受付時間を、短縮させていただきました。この変更は、会員の先生方にご不便をおかけすることとなり、大変申し訳なく思っております。
そもそも今次改定について行政側は、改定から施行までに2カ月間の時間的な余裕が生じるため、医療機関サイドはさまざまな準備、内容の周知が進むことが期待できると説明していましたが、それに反した結果になったといえます。したがって、歯科保険医療機関の混乱、そして多大な影響が今だに続いている責任は行政側にあること、その対応を本会が少なからず担っていることに対し、遺憾である旨は厚生労働省側に既に伝えております。
政府は昨年12月2日に新たな保険証の発行を終了し、マイナンバーカードの普及のためマイナ保険証を取得させ利用させることに邁進しています。しかし、保険医療機関におけるトラブルは全く解消されていませんし、9種類もの資格確認方法があるため、受付業務が混乱しているとの報告も受けています。これらを受けて本会は、現時点で以下の要望を国会議員に要請しています。
・現行の健康保険証は存続をさせること。少なくとも、健康保険証の有効期限(最長25年12月1日)を延期させること
・患者および窓口業務の混乱解消のため、マイナ保険証ありの患者に紙の「資格情報のお知らせ」を、マイナ保険証なしの患者に「資格確認書」を送付する取り扱いを改め、マイナ保険証の有無にかかわらず「資格確認書」を送付すること
本会設立から51年、多くの会員、事務局員、関係各位に支えていただきました。これからも一層、会員が患者、国民に良質な歯科保険医療を提供するためのお手伝いを心がけ、さらなる発展を目指します。
なお、会長を拝命して以来長きにわたりご理解、ご協力を賜ったことに心から感謝申し上げます。今後も本会に倍旧のご支援をよろしくお願い申し上げます。
東京歯科保険医協会会長 坪田 有史(2025年 年頭所感)