【教えて会長Vol.91】期中の診療報酬改定
Q 期中に診療報酬改定があると聞きましたが?
A 昨年12月25日に開催された中央社会保険医療協議会総会において、「中間年改定の年に行う期中の診療報酬改定について」が議題として提出されました。議題の一つに「歯科衛生士や歯科技工士のタスクシフト、手間への評価の見直し」が含まれていました。新規技術や材料が、年に4回ある期中のタイミング(3・6・9・12月)で保険適用されたこと(いわゆる「期中収載」)は、過去に何度も経験してきましたが、今回、歯科で「期中改定」が行われたことには驚きました。今までは1989年に消費税(3%)の導入に伴う改定をはじめ、5%に増税された97年、10%に増税された19年、そして健康保険法等改正に伴う94年に「期中改定」が行われています。当然ですが、財源がなければ「期中改定」は不可能ですから、何らかの理由で財源の確保ができたということなのでしょう。
Q 期中改定の中身は?
A 歯科衛生実地指導料(実地指)の口腔機能指導加算(口指導)が10点から2点増点の12点、歯科技工士連携加算1(歯技連1)が50点から10点増点の60点、歯科技工士連携加算2(歯技連2)が70点から10点増点の80点になります。改定は4月に施行されます。なお、これらの評価の目的は、歯科衛生士および歯科技工士の待遇改善であり、賃上げに繋げる意図が背景にあります。そのため算定する際には注意が必要です。
Q 口腔機能指導加算とは?
A 口指導は、口腔機能発達不全症、または口腔機能低下症と診断した患者に対して、歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が実地指(月1回80点)とあわせて口腔機能に関する指導を行った場合に加算します。口腔機能発達不全症の患者には正常な口腔機能の獲得を目的とした実地指導を、口腔機能低下症の患者には口腔機能の回復、または維持・向上を目的とした実地指導を行うことが求められます。なお、歯科口腔リハビリテーション料3(歯リハ3:月2回1口腔につき50点)を算定した同日には、その指導内容が歯リハ3で行った指導や訓練と重複した場合は、口指導は算定できないので注意が必要です。したがって、歯リハ3と口指導で行った指導内容はカルテ記載が必要です(保団連発行「歯科保険診療の研究2024年6月版」32〜33、120ページ参照)
Q 歯科技工士連携加算1、2とは?
A 歯科技工士連携加算(歯技連1)を算定するには、施設基準(表)を満たし、地方厚生局長へ届出を行う必要があります。
【歯技連1】
・レジン前装金属冠、レジン前装チタン冠、CAD/CAM冠の製作において、前歯の印象採得時に、歯科医師と歯科技工士がともに対面で色調採得および口腔内の確認などを行った場合に、印象採得料に加算します。
・6歯以上のブリッジの咬合採得時に、歯科医師と歯科技工士がともに対面で咬合関係の確認や口腔内の確認などを行った場合、咬合採得料に加算します。
・有床義歯の場合、9歯以上の部分床義歯または総義歯の製作時に、咬合採得または仮床試適の際に、歯科医師と歯科技工士がともに対面で、咬合採得時には咬合関係の確認など、仮床試適時には人工歯の排列位置などを確認した場合に、歯技連1を咬合採得料または仮床試適料に加算します。
※歯技連1の算定は1口腔単位で、算定は1回のみです。
【歯技連2】
・歯技連1と同じ条件に加え、歯科医師と歯科技工士がともに情報通信機器を活用して行った場合に印象採得料や咬合採得料に加算します。
※歯技連2の算定も1口腔単位で、算定は1回のみです。
今回、期中に診療報酬を改定することが可能という実例が示されました。これは、不合理な改定内容の改善と今後の「保険でよりよい歯科医療」を求める視点から注目すべきことと考えます。
東京歯科保険医協会
会長 坪田有史
(「東京歯科保険医新聞」2025年2月号掲載)