全国保険医団体連合会関東ブロック協議会は11月6日、下記の決議を採択した。
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決議
私たちはすべての国民のいのちと健康を守るために国民皆保険を堅持し、人々が尊厳を保って平和で幸せに暮らせる社会を実現すること、および保険医の生活と権利を守る活動を行っています。
政府の医療・社会保障削減政策は、公立・公的病院と保健所を弱体化させたため、今回のパンデミックという災害に対応しきれず、医療提供体制が崩壊する一因となりました。これを契機に問題点を検証し、次のパンデミックへの対策を講じることが急務です。
一方で、診療報酬は2002年以降、累計で10%以上引き下げられており、2022年4月診療報酬改定も全体では0.94%のマイナス改定となり、全体でのマイナス改定は2014年度から連続5回です。政府により医療・社会保障を削減する政策が進められてきたことに加えて、新型コロナウイルス感染症の7波にわたる拡大と円安の進行、物価の上昇、消費税損税などによって医療機関の運営は厳しさを増しています。
このような状況の中で、政府は2022年6月7日、「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針2022)」を閣議決定しました。その中で、コロナ禍における感染症対策の不手際の一因が、医療のIT化が進んでいないことにあるとして、2023年4月からマイナンバーカードを利用したオンライン資格確認システムの導入を保険医療機関・薬局に強要しています。さらに河野太郎デジタル相は10月13日の記者会見で、「2024年度秋に現在の健康保険証の廃止を目指す」として、保険証を原則廃止しマイナンバーカードと一体化させる方針を国会審議を経ることもなく、突如表明しました。しかしマイナンバーカードによる資格確認は、①導入にあたりレセコンや電子カルテの改修費と維持費が必要になる、②情報漏洩の危険性があり、コンピューターウイルスに感染する恐れもある、③医療情報が患者本人の許可なく産業利用される、等の多くの問題点を孕んでおり、あまりに拙速です。
マイナンバーカードの保険証利用例は少なく、保険証の原則廃止を前提とするマイナンバーカードによる資格確認は国民の理解を得られていません。医療機関の負担をいっそう増大させることにもつながる保険証廃止を前提とした「マイナンバーカードによる資格確認システムの導入義務化」を撤回するよう、強く要望します。
コロナ禍にあって多くの人々が、精神的にも経済的にも苦しい生活を余儀なくされ、健康状態の悪化が見られます。国民が安心して医療を受けられる環境と患者・利用者負担の軽減が必要です。日本国憲法第25条第2項は、「国は、すべての生活部面について社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と国の社会的責務を定めています。私たちは、国に対して、「公助」の責任を果たす医療・社会保障政策に立ち戻ることを求め、以下を決議します。
記
一、健康保険法に違反する、保険証の原則廃止方針と「マイナンバーカードによる資格確認システムの導入義務化」を速やかに撤回し、マイナンバー制度に依拠しない健康保険制度の維持を再確認すること。
一、新興・再興感染症のパンデミックに対し、責任を持って迅速に対応できる仕組みを構築すると
ともに、公衆衛生を担う保健所機能の強化と医療機関の運営が成り立つために必要な社会保障費の財源を確保すること。
一、後期高齢者の自己負担2割への引き上げなどの、患者・利用者負担増を速やかに見直すこと。また、国民健康保険制度に必要十分な国費を投入し、国保料の国庫負担割合を回復すること。
一、医療・社会保障削減政策を中止し、国の責任で、国民のいのちと健康を守るためにあらゆる事態に対応可能な医療提供体制の整備に早急に取り組むこと。
2022年11月6日
【全国保険医団体連合会関東ブロック協議会】
茨城県保険医協会 会長 高橋 秀夫 栃木県保険医協会 会長 長尾 月夫
群馬県保険医協会 会長 小澤 聖史 埼玉県保険医協会 理事長 山崎 利彦
千葉県保険医協会 会長 岡野 久 東京保険医協会 会長 須田 昭夫
東京歯科保険医協会 会長 坪田 有史 神奈川県保険医協会 理事長 田辺 由紀夫
山梨県保険医協会 会長 長田 高典