厚労省室長が収賄で逮捕された事件の背景
本日10月13日、厚生労働省の室長がマイナンバーの準備をめぐる収賄容疑で逮捕されました。産経新聞の電子版では、この室長は国立病院の職員採用を皮切りに、厚労省本省に勤務した経緯があると報道しています。
厚労省職員は国家公務員試験を受験しますが、その試験区分で「高卒程度」(以前は「短大卒程度」もありました)という区分があり、逮捕された室長はおそらくこの区分で受験し、合格したのではないかと思われます。
この高卒程度で合格、入省した場合、いわゆるキャリア組とは別に、俗称「ノン・キャリア」「プロパー」に属します。簡単な言い方をすると、「高卒程度入省=プロパー」とみて間違いありません。このプロパーの中でも国立病院・療養所の事務所に就業した人たちは「現地採用」と呼ばれ、通常は定年退職まで全国の国病・国療などの事務職を転々として、決して霞が関の厚生労働省本省には異動、配属されずに定年を迎えます。
ところが、全国の現地採用者の中から成績優秀とされる人材が「毎年1名だけ」抜擢され、厚労省本省の事務官として配属されます。たった1名ですから、高卒程度であっても一目置かれます。最終的に厚労省大臣官房大臣室の大臣秘書官まで上り詰めた例もあります。これは「高卒プロパー現地採用組」の中では日本で一番出世したことを意味します。しかし、本省では課長補佐までが出世の限界。そこで人事課からは、「出先機関や特殊法人なら、部長か課長までいける。本省では課長補佐でおしまい。どうする」と、30~40歳台で肩たたきを受けるのが標準的といわれています。通常は、ここで出先機関勤務をお願いして落ち着き、以後、厚労省本省には絶対に戻れません。以後は出先機関の部長処遇程度のポストで退職し、70歳くらいまでの天下り先も確保されるという流れとなります。
今回逮捕された室長も、そのような中の1人であると思われます。他の職員や出向してきたキャリア組役人は2年で異動して本省復帰しますから、室長といえども同じポジションに何年も在籍していると、いつの間にか仕事の細部、一般業者との付き合いが長くなり、人によっては人事権にまで発言力を持つ場合もあり、そこまで行くと内部ではその人物を「天皇」と呼んだりします。それらはすべて、「収賄」事件の温床となります。