No.289(2013年8月1日号:520号5面)
税務署からの文書による問合せが多くなったと聞きますが、なぜでしょうか?
今年一月一日に国税通則法が改正され、税務調査の手続きについて、次の大きく三つの点が明らかになりました。①調査を行うにあたって原則として事前通知をしなければならなくなったこと、②調査が終了したときも書面で行われ、その内容説明が義務付けられたこと、③帳簿等の提示や提出を求めることができることになったことです。
上記の手続きが明文化されたことで、税務署員は、調査開始から終了までの事務手続きに、これまで以上の時間を費やすこととなり、その結果、調査の件数が減少しています。そのため、国税庁は、納税者のところにきて行う調査のほかに、文書での照会や説明会を増やすことで現象を補おうとしています。
具体的な紹介文は、以下の二つの文書があげられます。①「書類の提出について」。これは、納税者が提出した確定申告書に源泉徴収票、社会保険料控除証明書、医療費の支出に関する領収書、青色申告決算書、収支内訳書、財産及び債務の明細など書類が添付されていない、もしくは計算に誤りがあると思われるので、その確認のために提出を促すものです。②「平成二十四年分決算書(収支内訳書)の内容についてのお尋ね」。これは、不動産所得があるがその経費が特に高い、または不動産所得があると思われる納税者に対して行われています。その内容は、例えば、収入の内訳や租税公課・修繕費・借入金利子・雑費などの内訳を細かく記載するように求めています。今後、このような文書が多くなることも予想されます。
税務署より前記の書類が郵送されてきたが、これに応じなければならないか?
結論から言えば、申告納税方式を採る所得税・消費税などは、「納付すべき税額が納税者のする申告により確定することを原則」(国税通則法)とされていることは変わりませんから、これらの文書を提出するか否かは納税者の自主的な判断に委ねられることは言うまでもありません。これらの文書は、改正国税通則法により、調査ではなく行政指導にあたることが明確に区分されました。この行政指導は、納税者の自発的な見直しを要請するもので、文書提出を義務づけるものではありません。ただ、納税者が誤りに気づいてこれらの書類を提出し、自ら修正申告した場合には、過少申告加算税は課されず、無申告加算税、不納付加算税については軽減(一五%または一〇%が五%)されるというアメもあります。
また、例えば財産及び債務の明細(合計所得金額二千万円を超える納税者がその年十二月三十一日現在の財産と債務の明細を記載する文書で、将来の相続税のための資料とされる)などは、提出しなくても税額に影響はないと言えるので、提出しなくても差支えありません。
しかし、注意すべきは、この行政指導に応じなければ、税務調査になるかもしれないということです。これは、あきらかな税務署の威嚇または脅しです。国税庁は納税者が自主的に文書を提出することで、調査件数の減少を補おうとしているのです。そうであるなら、税務署の威嚇・脅しに負けないで、税務調査を受けて申告内容の正しさを堂々と主張することも選択肢の一つになると思われます。
(協会顧問税理士・荒川俊之)
また、例えば財産及び債務の明細(合計所得金額二千万円を超える納税者がその年十二月三十一日現在の財産と債務の明細を記載する文書で、将来の相続税のための資料とされる)などは、提出しなくても税額に影響はないと言えるので、提出しなくても差支えありません。
しかし、注意すべきは、この行政指導に応じなければ、税務調査になるかもしれないということです。これは、あきらかな税務署の威嚇または脅しです。国税庁は納税者が自主的に文書を提出することで、調査件数の減少を補おうとしているのです。そうであるなら、税務署の威嚇・脅しに負けないで、税務調査を受けて申告内容の正しさを堂々と主張することも選択肢の一つになると思われます。
(協会顧問税理士・荒川俊之)