「無断欠勤職員の「退職」の扱い・退職者の書類保存期間について」/機関紙2014年9月1日(534号)より
質問 無断欠勤している従業員がいる。電話もつながらない。すでに引っ越している様子で連絡がとれない。退職手続きを進めたいと思うが、どうすればよいか。
回答 東京地方裁判所では、無断欠勤期間を2週間で懲戒解雇を有効とする判決を出したことがあります。そのため、就業規則に懲戒解雇規定が存在していれば、懲戒解雇が可能となる場合もありますが、懲戒解雇をするという意思表示を従業員へ到達させる必要があります。行方が分らない場合は、意思表示を到達させる方法として公示送達というものがありますが、この方法は、裁判所の手続きを利用するもので手続きは煩雑です。そこで、簡易な方法として、「欠勤の理由も転居先も使用者に伝えずに長期間無断欠勤をしていること」を根拠として、従業員から退職の意思表示があったとみなした上で、依願退職扱いとして対応する方法がよいでしょう(就業規則にそのような定めがあれば特に手続の必要はありませんので、記載しておくとよいでしょう)。ただし、この方法は解雇に該当しませんので、就業規則で退職金の支給を定めていた場合は、支給しなければなりません。しかし、従業員と連絡も取れずにいることから支払を保留にした形で、退職金を保管する対応がよいでしょう。退職金の支払い時効は5年です。時効が成立すれば、従業員の退職金の請求権は消滅しますので支払う必要はなくなります。
質問 退職した従業員の履歴書、タイムカード、賃金台帳等の保管義務は何年か。また、保管する場合の留意点について。
回答 労働基準法第百九条は「使用者は、労働者の名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければならない」と定めています。そのため、退職者の個人情報についても、法令上、3年間の保存義務があります。万一に備え、それ以上の期間にわたり保管するのであれば、損害賠償債務の時効期間である10年を目安に保管するという考えもあります。また、厚生労働省「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針(解説)」では、退職時における個人情報の適正な取扱いを確保するための留意点が紹介されており、これによると、「退職者の個人情報については、賃金台帳等の一定期間の保存を定めた労働基準法第109条など、他の法令との関係に留意しつつも、利用目的を達成した部分についてはその時点で、写しも含め、返却、破棄又は削除を適切かつ確実に行うことが求められます。仮に利用目的達成後も保管する状態が続く場合には、目的外利用は許されておらず、また、その後も継続して安全管理措置を講じなければならない」としています。つまり、いつまでも保管しておくことは適切ではなく、3年経過した時点で書類やデータ等の個人情報について保管の必要があるか否かを検討し、長くとも10年を目安として廃棄等を判断する必要があります。