未収金や家族治療などの税務上の対応について/機関紙2015年3月1日号(№540号)より

未収金や家族治療などの税務上の対応について/機関紙2015年3月1日号(№540号)より

 

質問 治療費の一部または全部を支払っていない患者さんがいる。その未収分は確定申告ではどうなるのか。

回答 患者さんからは、その代金をもらっていなくとも、未収金(売掛金)として売上に計上する必要があります。会計処理は、実際の現金収支の時期とは関係なく、役務(サービス)の提供があった時にその対価を計上するのが原則です。そのため、支払を受けていない対価についても将来の代金回収を見越して売上に計上しなければなりません。売上に計上した未収金を回収した際には、その代金は、すでに売上に計上されていますので、会計処理としては未収金の回収としてその残高を減らすことになります。

 

質問 未収金が回収できない場合の会計処理はどうなるのか。 

回答 回収できないことが明らかになった場合は、その明らかになった事業年度において貸倒損失(貸倒金)として損金経理することができます。しかし、この会計処理を行うためには、前記の回答と同様に貸倒となるべき代金が売上に計上されている必要があります。さらに、代金が回収できなくなった根拠が必要です。具体的には、内容証明等を利用し、何度も回収に努めたことや、患者と音信不通となり、回収不能となったことを説明できる証拠などを採った上で、損金処理する必要があります。

 

質問 従業員や家族の歯科治療を行った。会計上の取り計らいはどうすべきか。

回答 対象者によって取り計らい方法が変わってきますが、いずれの場合も、いったんは窓口負担金の徴収は原則必要です。従業員を保険で診療し、窓口負担金分を医院としての福利厚生とするときは、窓口負担金額を保険収入として売上に計上し、その同額を福利厚生費の両方に計上します。友人などの場合は、同様に保険収入と接待交際費の両方に計上します。収入と支出の両方に同額が計上されるため所得金額は変わりませんが、会計処理は必要です。また、家族に対して保険で診療した時は、窓口負担金額を保険収入として計上しますが、その同額を経費とすることはできません。自由診療で家族を診療した場合は、棚卸資産の家事消費となりますので、原価相当分または通常いただく代金の七割(3割引)のどちらか高いほうを自由診療収入に計上することになります。

 

質問 患者さんから領収書の再発行を求められている。どう、対応すべきか。

回答 医療費の領収書は、医療費控除として所得税の還付を受けることができる証書です。再発行するということは、還付を受けることが可能な書類を二重に発行することになります。そのため領収書の再発行を行う場合は、その領収書が再発行であることがわかるように明記する必要があります。

近年では「領収証の再発行は致しかねますので、大切に保管して下さい」などと表記している医療機関も少なくありません。