知っておきたい雇用のルール①従業員の労災保険加入/機関紙2015年5月1日号(№542号)より
質問① 当院には常勤で試用期間中の歯科衛生士とパート従業員がいる。これらの従業員は労災保険に加入できるのか。
回答① 労災保険は、公務員や船員保険の被保険者などの一部の例外を除き、すべての労働者に適用されます。したがって、雇用形態や試用期間中か否かを問わず労災保険の対象となります。
質問② 当院が常勤の従業員を雇用した際にハローワークでこの従業員の雇用保険の加入手続きをとったが、パート従業員は週の所定労働時間が20時間に満たないのでハローワークでの手続きを行っていない。労災保険ではどのような手続きをとればよいか。
回答② 労災保険は、歯科医院を含め適用事業所に使用される者は法律上当然に被保険者となりますので、従業員一人ひとりについて、雇用保険のような資格取得届の提出は必要ありません。ご質問のケースでは、毎年6月1日~7月10日まで労働保険料(雇用保険料と労災保険料を合わせたもの)の前年度分の確定保険料の申告と当年度分の概算保険料の申告を行っていると思います。その手続きの際に手続き書類にその事業所の賃金総額を記入する欄にパート従業員や試用期間の方の賃金(見込み)総額を記入し、賃金総額に応じた労働保険料を納付することになります。なお、新規開業で従業員を雇用するようになった場合には、10日以内に労働基準監督署に「労働保険 保険関係成立届」を提出し、その後ハローワークで「雇用保険 適用事業所設置届」を提出するほか、雇用保険の適用となる従業員について資格取得届を提出します。また、労働保険料については、その年度の概算額を前納することになりますのでご注意ください。毎年6月1日~7月10日まで労働保険料の前年度分の確定保険料の申告と、当年度分の概算保険料の申告を行います。
質問③ 従業員が後片づけの際に誤って滅菌器で火傷を負った。痕が残りそうなほどひどい火傷である。どう対応すればよいか。
回答③ ご質問のケースでは、火傷と業務との因果関係が認められるため、業務災害にあたると考えられます。したがって健康保険ではなく、労災保険を使って治療します。具体的には、労災指定医療機関に受診してもらい、この労災指定医療機関を通じて「療養補償給付たる療養の給付請求書」(業務災害用)を労働基準監督署に提出することになります。なおこの書類には事故の発生状況など事業主側が記載する欄もありますので、速やかに記載してください。また、近隣に労災指定医療機関がないなどの事情がある場合は通常の医療機関を受診します。そこでは健康保険証は使わずに、いったん治療費全額を支払い、領収書を受け取ってください。さらに「療養補償給付たる療養の費用請求書」(業務災害用)に領収書を添付し、従業員または医療機関から労働基準監督署に提出します。その後に、この従業員に治療費が還付されます。なおこれらの書類は労働基準監督署から取り寄せることも可能ですし、東京労働局のホームページからのダウンロードも可能です。