税務調査への対応について

№268:2011.9.1:495号

質問1

アポイントなしで突然、「税務調査をしたい」といって税務署員がやってきた場合、応じる必要はあるか。

突然の調査は断りましょう。税務調査は、強制調査(※1)を除いて、納税者の承諾が必要となる任意調査です。調査日は、先生の都合の良い日に決めることができます。所得税法第234条では、税務署員の質問調査権が認められており、正当な理由なく調査拒否することはできません。そのため税務署員は「帳簿を見るだけです。調査の拒否はできません」などと言ってきます。しかし、先生には、診療もあれば、家庭の用事もあります。このようなことは、突然の調査を断る正当な理由です。「突然来られても困ります。本日は、患者の予約(家庭の用事)があるからできません」と、はっきりと断りましょう。
※1 国税局査察部が行うもので、裁判所から捜査令状を取り、診療所や自宅に突然やってきます。この場合は、拒否することはできません。捜査の目的は証拠物件や書類を押収することで、多額で悪質な脱税容疑がある場合に行われます。

質問2

このたび、初めての税務調査(任意調査)が入ります。どのようなことに注意すれば良いでしょうか。

税務調査は「される」のではなく「させる」のが基本です。税務調査を行うには、必ず理由があります。したがって、まず理由を聞いて、何の調査をしたいのかを明らかにさせることが大切です。署員はさまざまな手法を使い、調査の範囲を広げてきます。「なぜ調査をするのか」「何を調べたいのか」その説明を求め、調査の範囲を限定させることが大事です。所得税法では、税務調査は「必要があるときは…」と規定されています。税務調査をうける際に、その理由を確かめることは、納税者として当然の権利です。
調査の当日は、ほとんどの場合、日常的な世間話から始まります。趣味の話や旅行の話などで、一見、税務調査に関係ない話に思えますが、税務署員は「税金」を意識して会話をしています。北海道に家族旅行した話を聞けば、その代金を診療所の経費で落としていないか見ているのです。何気ない会話でも、調査の糸口になる場合があります。雑談だからといって油断してはいけません。署員からの質問に対しては、判らなければ即答する必要はありません。曖昧な答弁は、かえって誤解を与えます。「調べて後日に返答します」で構いません。初めての税務調査に戸惑いや心配も多いことでしょうが、税務調査は、決して怖いものではありません。自信をもって、毅然とした態度で望むようにしましょう。