試用期間と労働条件通知書/機関紙2016年7月1日号(№556号)より
質問① 採用に当たり試用期間を設ける予定である。どのような点に注意すればよいか。
回答① 試用期間に関して、歯科診療所の場合、法律の規定はないので、就業規則に定めておくことが必要です。一般的には2週間から3カ月の範囲で決めているところが多いようです。賃金に関しては、最低賃金を守れば本採用になるまでは「採用後の給与の8割を支給する」などと決めることもできます。ただし、1年を超える試用期間は無効とされた判例もあるので、安易に長い試用期間を設定するのは避けましょう。労働保険や社会保険は要件に当てはまれば加入する必要があります。
質問② 試用期間中(1カ月)の従業員を業務態度が良くないので解雇しようと考えている。問題ないか。
回答② 労働基準法第21条では、試用期間中の者について解雇予告の必要はないと定めていますが、これは就業規則が定めた試用期間のすべてではなく、試用期間開始から14日以内に限られています。14日を超えてしまった場合の解雇手続きに関しては、通常の労働者と同じく、労働基準法第20条が定める30日前の解雇予告、または30日分の平均賃金の支払いが必要になります。今回は雇用してから1カ月の従業員ということなので、30日後の解雇予告、または30日分の平均賃金の支払いが必要になります。また、試用期間中の解雇であっても、法律上、解雇をするという行為は客観的に合理的な理由や社会通念上相当として認められる場合に限られるとされていますので、安易に決断すべきではないでしょう。
質問③ 新しく雇った従業員から「労働契約に関する通知書がほしい」といわれた。今まで、このような文書を従業員に手渡したことがないのだが、どのようなことを記載すればよいのか。
回答③ 労働基準法第15条では、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間、その他の労働条件を明示しなければならない、とされています。もし明示しなければ、30万円以下の罰金に処せられる場合もあります。書面の交付により明示しなければならない労働条件は、労働基準法施行規則第5条に、①労働契約の期間、②就業の場所および従事すべき業務、③始業および就業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇ならびに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換、⑤賃金、⑥退職―と明記されています。また、就業規則などで別途、賞与や退職金、休職や表彰などの定めがある場合も明示しなければなりません。労働条件通知書や就業規則のたたき台は、保団連発行の「医院経営と雇用管理2013年版」にひな形が掲載されています。当協会では、同書を会員の先生に1冊無料で進呈していますので、ご希望の先生は協会までご連絡ください(TEL 03―3205―2999/担当:経営管理部)。