審査支払に関する業務において、都道府県間における審査結果の歯科医学的な説明のつかない不合理な差異が現在最も大きな課題であり、今回は、審査結果の不合理な差異解消に向けての取り組みを紹介させていただきます。
審査結果の不合理な差異解消に向けて、まずコンピュータチェックルールや審査基準の全国統一化を進めるとともに、審査の差異の「可視化レポーティング」による差異の見える化を進めています。また、AIによるレセプト振分機能は全国データで行われていることにより、審査業務の効率化だけなく、不合理な差異の覚知のきっかけにもつながっていると考えております。なお、適正なレセプト請求に資するように、電子点数表やコンピュータチェックルールなど「請求支払」に係る情報、審査の一般的な取扱いや審査情報提供事例など「審査」に係る情報は、支払基金のホームページを通じて、歯科医療機関のレセコンに取り込みやすい電子媒体による提供も含め、積極的な公開、情報提供を図っているところですので、積極的にご活用いただければと考えております。
(1)審査基準の全国統一化
同一審査委員会内での審査委員間の差異を無くすために各都道府県の審査委員会において独自の審査基準である「取決事項」が作られている場合があり、そのため、本部に設置された検討会で審査基準の統一化を進めています。また、22(令和4)年
10月の審査事務集約後は、審査事務センター等において診療科別の事務組織を構成し、職員が複数の都道府県の審査事務を担当することで把握できる都道府県間の審査結果の差異事例などについて確認していくなかで、取り扱いの統一をさらに進めていくことにしています。なお、歯科については、「歯科」「歯科口腔外科」「矯正歯科」「小児歯科」を分けることなく、1つの診療科として取り扱われることとなります。
(2)審査の差異の可視化
レポーティングの実施審査結果の差異の見える化を図ることを目的として、各都道府県毎の事務点検や審査委員の審査結果について、まず機械的に抽出した条件で「検証前レポート」を作成。その後、差異が適正な理由によるものか、歯科医学的に説明のつかない不合理な差異であるかを検証し、「検証結果レポート」を支払基金のホームページで公表しており、歯科の事例は、現時点では審査情報提供事例がレポーティングの対象となっています。
検証により差異が見られた場合は、算定ルールに係るものと歯科医学的な判断によるものとに整理し、算定ルールに係るもののうち職員起因により差異が見られる場合は上司による教育、審査委員起因による場合は歯科担当副審査委員長等から周知して改善を図っています。
(3)国保連との審査基準の取り扱いの統一
支払基金(社保)と国保連(国保)との審査基準の全国統一の推進方策として、まずは、支払基金と国保中央会および国保連のそれぞれの組織内において全国統一された事例について情報共有を行い、できる限り両機関で審査基準を統一する作業を鋭意進めています。また、厚生労働省や国保中央会と連携して、双方の審査委員の併任の具体化に向けた検討も行っています。
次回は、適正なレセプト請求に向けてご留意いただきたいことを紹介させていただきます。
山本光昭 / 社会保険診療報酬支払基金 理事
やまもと・みつあき 1984年3月、神戸大学医学部医学科卒業後、厚生省に入省。横浜市衛生局での公衆衛生実務を経て、広島県福祉保健部健康対策課長、厚生省健康政策局指導課課長補佐、同省国立病院部運営企画課課長補佐、茨城県保健福祉部長、厚生労働省東京検疫所長、内閣府参事官(ライフサイエンス担当)、独立行政法人国立病院機構本部医療部長、独立行政法人福祉医療機構審議役、厚生労働省近畿厚生局長などを歴任し、2015年7月、厚生労働省退職。兵庫県健康福祉部医監、同県健康福祉部長、東京都中央区保健所長を経て、2021年4月より現職。